竹内行夫さんの外交証言録

竹内行夫さんが「外交証言録 高度成長期からポスト冷戦期の外交・安全保障 国際秩序の担い手への道」(2022年、岩波書店)を出版されました。500ページ近い大著です。
かつては、官僚も回顧録を書くことがありましたが、最近では少なくなりました。残念なことです。政治主導は望ましいのですが、例えばこの本のように、この30年間の日本外交の軌跡を話し、書ける政治家はいるでしょうか。

竹内さんが活躍され、本書の対象となったのは、冷戦後期から、冷戦が終了し、その後の変動期です。日本外交も、アメリカに追随しておればよい時期から、大変動の時代を迎えました。
この間の日本外交を外から分析することも重要ですが、当事者の語る中からの記録も重要です。もちろん、一人の外交官が日本外交すべてを語ることはできませんが、携わった事案については最も詳しいのです。ただし、書けないこともあるでしょう。

「はじめに」で竹内さんも書いておられますが、回顧録は自己弁護や美化という恐れがあります。竹内さんはそれを避けるために、残してあった膨大な記録を基に、記者と学者の聞き取りに臨まれたそうです。

竹内さんは、奈良女子大附属高校の先輩です。宮沢内閣で総理秘書官を勤められ、私は宮沢内閣の村田自治大臣秘書官で、お世話になりました。その後、定期的にお話を聞く機会があり、尊敬する先輩です。