経済格差の意識調査

3月27日の読売新聞社が、格差に関する全国世論調査結果を伝えていました。

・・・日本の経済格差について、全体として「深刻だ」と答えた人は、「ある程度」を含めて88%に上った。「深刻ではない」は11%だった。
具体的な格差7項目について、それぞれ今の日本で深刻だと思うかを聞くと、「深刻だ」との割合が最も多かったのは「職業や職種による格差」と「正規雇用と非正規雇用の格差」の各84%だった。岸田首相は「新しい資本主義」を掲げ、これまで市場に依存し過ぎたことで格差や貧困が拡大したと繰り返してきた。調査からも、格差への問題意識が広く共有されていることが明らかになった。

自分自身が不満を感じたことがある格差(複数回答)としては、「正規雇用と非正規雇用の格差」の47%が最も多く、「職業や職種による格差」42%、「都市と地方の格差」33%などが続いた。格差縮小のため、政府が優先的に取り組むべき対策(三つまで)は、「賃金の底上げを促す」51%、「大企業や富裕層への課税強化など税制の見直し」50%、「教育の無償化」45%などの順で多かった。
日本の経済格差が今後どうなると思うかを聞くと、「拡大する」が50%で、半数が悲観的だった。「変わらない」は42%で、「縮小する」は7%にとどまった・・・

またその分析では
・・・経済格差が広がるのは誰の責任が最も大きいと思うかを聞くと、「政府」49%、「個人」24%、「企業」20%の順だった。「政府」は全ての年代で最多だったが、高齢層ほど「政府」の割合が高く、若年層ほど「個人」の割合が高い傾向がみられた。
経済格差を縮小するために、政府が優先的に取り組むべき対策を8項目の中から3つまで選んでもらうと、「賃金の底上げを促す」51%、「大企業や富裕層への課税強化など税制の見直し」50%、「教育の無償化」45%、「社会保障の充実」43%などの順だった・・・

新副知事二人

4月は人事異動の時期です。うれしいことがありました。かつて一緒に仕事をした人が2人も、県の副知事になったのです。一人は岩手県の八重樫幸治・副知事、もう1人は沖縄県の池田竹州・副知事です。

八重樫君は平成2年秋から1年間、池田君は平成3年秋から1年間、当時の自治省財政局交付税課に派遣され、仕事をしてくれました。私は、平成2年春から4年末まで交付税課課長補佐でした。
当時は「昭和の働き方」が最盛期でした。深夜残業や休日出勤も、季節によっては普通でした。ふるさと1億円事業の続きなど、交付税の算定もどんどん増えていきました。岡本課長補佐は新しい物好きで、それらの仕事を次々と引き受けてきたのです。岡本補佐は当時35歳。ばりばり仕事をして、職員にもそれを求める「悪い上司」でした。反省しています。
そのかたわら、彼らを含め関係者に制度と動向を知ってもらうために『地方交付税 仕組と機能』の元となる原稿を書き、彼らが悩まないように執務参考の「涙なしの交付税課勤務」も作っていました。忙しい時期を終えると、「日本の頂上で交付税を考えよう」と、職員たちを富士登山に誘いました。

ともに苦労をした(正確には苦労をかけた)職員が出世するのは、うれしいですね。副知事という職も苦労が多い職ですが、かれらなら上手にやってくれるでしょう。
がんばれ八重樫君、池田君。

第二の「危機の30年」

3月28日の朝日新聞オピニオン欄「記者解説」、三浦俊章・編集委員の「危機の30年とロシアの侵攻 冷戦後の失敗教訓に、秩序再構築を」から。

・・・政治と外交を取材してきた過去30年を振り返ると、行き先不明のジェットコースターに乗り続けてきたような気がする。
1989年にベルリンの壁が崩壊した後に東ドイツに入った。歓喜と未来への楽観があふれていた。西側は冷戦の「勝利」に酔い、市場経済と民主主義が世界を覆うと信じた。しかし、グローバル化は貧富の差を広げ、国家間対立は深まり、専制主義とポピュリズムが台頭した。そのあげくのウクライナ侵攻である。プーチン大統領は核の使用をちらつかせる。米ロの全面対決になりかねない。
20世紀には二つの世界大戦があった。両者の間はわずか20年。当初は平和な世界をつくろうと理想主義が盛り上がったが、経済恐慌を機に暗転、破局へと落ちていった。この時代は歴史家E・H・カーの名著にちなんで「危機の20年」と呼ばれる。我々もまた、冷戦終結以来の歩みを「危機の30年」としてとらえ直す必要がある・・・

・・・今日に至る「危機の30年」は三つの時期に分けられるだろう。
第1は、壁崩壊から世紀の変わり目までの「おごりと油断の時代」である。唯一の超大国となった米国の関心は経済に集中し、市場万能の新自由主義が全盛となった。第2次大戦の敗戦国ドイツ(西独)と日本は、米国の手厚い援助を得て、経済復興と民主化を実現した。しかしソ連の共産党体制が崩れたとき、民主化は既定路線だと米国は安心した。ロシアは過酷な市場原理に委ねられ、富が新興財閥に集中し、経済は崩壊した。民主化にも失敗し、旧ソ連の保安機関KGB出身のプーチン氏の体制が生まれた。

第2の時期への転機には、ワシントン特派員として遭遇した。2001年の同時多発テロで、米外交の優先課題は一変した。だがそれは「一極崩壊の時代」の始まりだった。力で世界をつくりかえられると過信したブッシュ政権は、アフガニスタン、イラクへの戦争を始め、泥沼に陥った。市場原理万能の経済は08年のリーマン危機を引き起こし、こちらも壁にぶつかった。

第3の時期は、10年代以降の「専制と分断の時代」である。米国の混迷とグローバル化の失敗を見たロシアと中国の指導者は、専制的支配を強めた。西側民主主義国でも、移民への敵意や格差の拡大から、ポピュリズムが広まった。英国は欧州連合(EU)離脱を決め、米国には社会の分断をあおるトランプ大統領が生まれた・・・

消費者庁新採研修講義

今日4月6日は、消費者庁の新採職員研修講義に行ってきました。新採職員のほか、消費者庁採用の先輩たちも数十人参加しました。
消費者庁は2009年(麻生内閣時代)にできた、新しい役所です。自前の職員採用を始めていますが、現時点では職員の多くは他の省の出身者です。
よく似た例では、かつての環境庁があります。環境庁も発足時には仕事を引き継いだ厚生省などの出身者で構成していましたが、その後の職員採用で環境庁・環境省育ちの職員が増えました。なお、復興庁はさらに新しい役所ですが、これは時限組織であり、自前の職員採用をしていません。各省からの出向と任期付き採用で構成しています。

霞が関のほとんどの省庁が、国民を直接に相手にせず、業界を相手にしています。これまでの行政の主な任務が、産業振興、公共サービス提供だったので、その手法が効率的だったのです。法務省や警察庁という取り締まりの行政はありますが、生活者、困っている国民を支援する役所はなかったのです。
産業振興と公共サービス提供を達成し、他方で成熟社会の課題が出てきています。21世紀の行政は、重心を業界育成から生活者支援に移す、移すべきだと私は考えています。消費者庁への期待を込めて話をしてきました。

構想は紙に書いて

3月26日の読売新聞夕刊、石田衣良さんの「物語は余白に広がる 紙を使った小説発想法」から。
・・・原稿用紙のひとマスひとマスを手書きの文字で埋めていく。そんな小説家は今や少数だ。人気作家の石田衣良さんも、もちろんパソコン派。しかし、執筆前に構想を練る段階では紙にキャラクターの特徴や話の流れを書き込むという。なぜ、紙とパソコンを使い分けるのか・・・

・・・構想段階では、紙が持っている軽さとか自由さみたいなものがいいんですよね。ディスプレーに向かうよりは。余白が広いし、継ぎ足してどんどん広くできる。パソコンもウィンドーをたくさん開けますけど、紙の方がもっと自由に組み替えられますね・・・
・・・アイデアのメモ用には無地のはがきを1000枚くらい買ってあって、なくなれば補充。家にいるときは万年筆、外では水性ボールペンで書いていきます。
いいアイデアは机の前の壁に貼り、目につけばちょっと考えるということを繰り返します。今貼ってあるのは7、8枚。この段階では思いついたものを「こんなのつまらない」と捨てず、全て取っておいた方がいい。そういう無駄なことも紙だといいんですね・・・