在宅勤務での意思疎通確保

2月21日の日経新聞「働き方innovation 生産性上がっていますか(3)」「メルカリ、在宅でチーム力 離れても密に意思疎通」から。

・・・テレワーク普及で職場の一体感が薄れがちの中、チームをどう構築するか。注目されるのが、同じ目標へ結束する「チームビルディング」だ。在宅勤務率9割のフリマアプリのメルカリは、互いを知るプログラムや多くの部活動を設けている。生産性を高めるにはまず意思疎通から。コロナ禍でその重要性が増している・・・

・・・心理学者が考案した「タックマンモデル」によると、チーム力の強化は生産性向上に直結する。チームは最初の「形成期」は様子見の段階で、次の「混乱期」は個性や意見がぶつかりあう。衝突を乗り越える第3段階の「規範期」で個人の役割やルールが明確に。第4段階の「達成期」で同じ目標へ個々が能力を発揮し、成果を手にする。
メルカリは同様の概念に基づきチーム力の向上を図ってきた。21年6月期通期には連結最終損益で上場以来初の黒字を達成。一体感を目指した組織づくりが原動力となっている。
一方でテレワークが増えるにつれ課題も生じた。新型コロナウイルスの感染拡大も踏まえ勤務地などを自由に選べる制度を導入、今では1千人以上の社員の約9割が在宅勤務する。やり取りはオンライン中心で業務上の話に終始しがち。行き違いが起き、雑談からの新たなアイデアが生まれにくくなった。「誰にどう聞けばよいのか分からない」。不安を抱える新入社員や転職者もいた。

こうした中、21年に取り入れたのがチームコミュニケーションワークだ。
遠隔ではオフィスと違い細かな指示を出すのは難しい。そこで社員それぞれに、具体的な仕事の進め方や目標を定量的に定める「OKR(目標と主要な成果)」を意識させる。円滑な意思疎通で互いの働きを確認しながら、在宅勤務でも高い生産性をあげていく。
労務部門の打越拓也マネジャーは「互いに信頼関係が基盤にないと、全員が活躍できる環境づくりはできない」と強調する。今後も活用を増やす考えだ・・・

本田由紀著『「日本」ってどんな国?』

本田由紀著『「日本」ってどんな国? ――国際比較データで社会が見えてくる』( 2021年、ちくまプリマー新書)が、お勧めです。

帯に「私たちの「普通」は世界では「変」だった」とあります。家族の形、性別役割、学校での学び、友達、仕事などについて、統計数値を元に世界比較をしています。そして、日本の「普通」が、いかに世界とは変わっているかが示されます。
かつては、日本の特殊性は日本優秀論としてもてはやされたのですが、今や日本特殊論は日本の経済停滞、社会の不安の原因となりました。あれほど売れた「日本人論」が最近では、本屋に並びません。このホームページでは、高野陽太郎著「日本人論の危険なあやまち」を紹介しました。

ちくまプリマー新書は、中高生を対象としているのでしょうか。簡潔にまとめられていて、大人にとっても読みやすいです。長く書くのは体力があればできますが、簡潔にまとめるには知能が必要です。
なお、同じように数値で日本の現状を分析した本に、橘木俊詔著 『日本の構造 50の統計データで読む国のかたち』(2021年、講談社現代新書)

進まない学校でのデジタル教育

2月15日の日経新聞に「学校パソコン、もう返したい 教師の本音「紙と鉛筆で」」が載っていました。

・・・義務教育の子どもにパソコンやタブレット端末を1人1台ずつ持たせる「GIGAスクール」構想が空回りしている。国の予算でばらまかれた端末を持て余す現場からは「もう返したい」との声も出る。日本の教育ICT(情報通信技術)はもともと主要国で最低レベル。責任の所在がはっきりせぬまま巨額の税金を投じたあげく、政策が勢いを失いつつある。
「紙と鉛筆でなければ頭に残りませんよ」。神奈川県の中学校にICT支援員として派遣された山本真理さん(仮名、40代)は、中堅教師から本音を聞かされた。日々の業務が山積みの学校現場にとってGIGAスクールは「国から降ってきた話」であり、前向きに受け止めるムードになりにくい。
一部の若い教師が関心を寄せても、学年や教科で足並みがそろわなければ「保護者から『不公平』というクレームがくるかもしれない」といった組織の論理が優先されがちだ。山本さんは「結果的にパソコン授業をやりたくない先生やデジタル機器を扱うのが苦手な先生に合わせる流れができてしまう」と実態を明かす・・・

そこに、地方分権と教育委員制度が指摘されています。
・・・教室や家庭で端末を具体的にどう使うか国に強制力はなく、成功事例を積み重ねて社会の支持を広げるしかない。端末は25年前後に更新時期を迎える。責任体制を明確にして政策を再起動しなければ、めったに使われないパソコンに巨額の税金を費やし、子どもたちの教育機会も奪うことになる・・・
・・・■日本の地方教育行政 戦後日本の教育行政では、都道府県や市区町村ごとの教育委員会が幅広い権限を握ってきた。ところが、審議の形骸化やいじめ事件への対応などが問題になり、2015年の法改正で首長が教育委員会のトップである教育長を任命する仕組みになった。GIGAスクール構想が軌道に乗るかどうかも首長の動きに左右される面がある。
首長には教育委員会と協議して教育の目標や施策を「大綱」にまとめる権限がある。萩生田光一前文部科学相は21年4月、端末が未配備だった自治体の首長に直接連絡したと明らかにした。「ぼーっとしている自治体」「納品はされたが学校ではなく自治体の倉庫にあるという首長もいた」などと言葉の端々に不満をにじませた・・・

でも、教育委員会制度は、戦後の占領政策でアメリカから輸入した制度です。アメリカでのデジタル教育は進んでいるのですから、制度の問題ではないでしょう。新しいことを受け入れない教員、教育委員会の体質に問題があるのでしょう。

住みよい町を続ける

2月19日の日経新聞に、「住まいのまちなみコンクール」という全面広告が出ていました。受賞したのは、福島県いわき市の葉山自治会です。「住まいの街並み」と聞くと、きれいな街並みの風景を想像しますが、地区や事業者ではなく、自治会が表彰されています。

住まいのまちなみコンクール」のホームページによると、「このコンクールは、地域の特性を活かし、魅力的な住まいのまちなみを育む維持管理、運営などの活動に実績を上げている住民組織をまちづくりのモデルとして表彰し、支援します」とあります。
かつては、新しい住宅地を創り出す事業者(住宅地の生みの親)を表彰するものだったそうですが、住み継ぐことができるまちなみをいかに維持管理、運営していくかを主眼とした、育ての親である住民組織を対象にするようになったそうです。

モノを作ればよい時代から、運営を続けていく時代になりました。住みやすさを維持するには、継続的な努力が必要です。それも、建設業者に作ってもらってお金で買うことができず、住民が自分たちで続ける必要があるのです。
これも、モノからコト(関係)への変化の一つでしょう。さらにその関係は、継続することが必要です。モノなら作れば完成、買えばすむですが。

コメントライナー寄稿第2回

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第2回が配信されました。今回は「管理職の必須知識」について書きました。同時に、iJAMPでも配信されました(それぞれ有料で登録会員だけです)。

企業も役所も、管理職の育成に悩んでいます。職員を使って業務を達成するという任務は変わらないのですが、社会の変化や従業員の意識の変化に対応する能力が必要となりました。
これとは別に、管理職に必要な知識が増えました。情報通信技術とサイバーセキュリティ、コンプライアンス、不祥事が起きた際の広報対応、災害時の業務継続、仕事と生活の調和、セクハラやパワハラの防止、心の不調を抱える職員への対応などなど。
担当している業務の専門知識の前に、このような共通知識が必要になりました。これは意外と気がつかれていません。
これらの項目それぞれに、専門書や研修はあります。ところが、これらの一覧、「管理職ならこれだけは覚えておこう」という教科書がないのです。

で、市町村アカデミーで、研修を作りました。
一つは、上に述べたような内容の「管理職の必須知識講座」です。
もう一つは、「政策の最先端」です。デジタル化や感染症対策など専門性の高い科目は既にあるのですが、それとは別に管理職や企画担当職員に最先端の政策課題とその動向を学んでもらいます。「最先端政策のデパート」を目指します。内閣官房や総務省などの専門部局の協力を得て、内容を練り上げました。

コメントライナー前回は、1月6日「若手官僚の不安と不満」でした。