損保会社のデータ提供による社会貢献

2月21日の読売新聞夕刊に、「防災・減災 損保データ提供」という記事が載っていました。
・・・大手損害保険各社が、災害時に自治体やボランティアへ被災データを提供する取り組みを始めている。人工知能(AI)や衛星の活用でデータの収集・分析がしやすくなった。各社の持つデータを使い、近年増えている大規模災害に備える狙いがある。
東京海上日動火災保険は1月下旬、大分、宮崎両県で震度5強を観測した地震の被災情報をNPO法人「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク」に提供した。昨年末に結んだ協定に基づく初めての事例となる。市町村単位の被災データを無償で送った。
東日本大震災以降、市民の間で防災意識が強まり、大規模な災害では、数十万の規模でボランティアが集まる。これまでは、災害ニュースを基に、被害が大きそうな自治体に入って、派遣先の指示を仰いできた。最近は災害が広域にわたり、どこに行くべきかを選ぶのも難しくなっている。
損保各社は被害データを主に、保険の査定に使ってきた。適切な情報を伝えられれば、ボランティアの活動を支えられる・・・

・・・自治体の災害対策に役立ててもらおうとの動きもある。三井住友海上火災保険は、気象や位置情報を使って、災害時に人がどこに滞留しやすいかをAIで分析。地図に示して提供する実証実験を始めた。異常気象の発生を予測し、効率的な避難計画の策定につなげる・・・・

学歴分断社会

2月18日の朝日新聞オピニオン欄、吉川徹・大阪大学教授の「学歴分断を超えて」から。
――日本社会は「学歴分断社会」だと主張されていますね。
「日本では、最終学歴が大卒(短大卒、高専卒含む)か、非大卒(中学校卒、高校卒、専門学校卒)かによって、社会に出てから大きな社会経済的格差が生まれることが、大規模な階層調査のデータから明らかになっています」
「戦後、高学歴化は進みましたが、1980年代に大学などへの進学者がほぼ半数になってから伸び悩み、ここ数年は60%前後です。成人における大卒者は現在ちょうど50%。この比率はこの先20年は大きく変わりません」
――その学歴格差を「分断」とまで言い切るのはなぜですか。
「分断とは、二つの集団の構成員が入れ替わらず固定化しており、集団同士が隔てられ、相互交流が少ない状態をさします。いま日本の現役世代は約6200万人ですが、70%以上が親と同学歴です。大卒の子は大卒、非大卒の子は非大卒という形で世代を超えて学歴格差が継承されている。夫婦間の学歴もほぼ70%が同じです」
「大卒と非大卒は人生の経路が交わらず、交流も少ない。ある学生が、成人式で小中学校の同級生に再会して学歴分断を実感したと語っていました。『長い間会わなかったから存在さえ忘れていた。大学に進まない彼らとは生活スタイルも話題も重ならない』と」

――大学無償化など高等教育への公的支援を増やすのですね。
「経済的事情で大学進学を諦める若者は支援すべきです。ただ、『誰もが大学で学ぶべきだ』と一つの道だけに誘導する政策はいかがなものでしょう。豊かに生活できる地位を得るには大学に行くしかない、という考えを押しつけるのは『大卒学歴至上主義』にほかなりません」
――でも、大卒の方が社会的経済的に恵まれるのでは。
「大卒の学歴は必要ないと自分の人生を思い描き、十分に考えて高卒、あるいは専門学校卒で社会に出て行く若者は少なからずいます。なのに、大学に進学しない若い世代の存在を、すべて貧困問題のように見るのはおかしい。官僚も政治家も有識者もマスコミも、大卒の世界中心で生きてきたので、そのような非大卒層の心情が見えていません」
「政府は大学院進学率の向上に躍起ですが、様々な誘導策にもかかわらず、この20年間、大学院進学者はずっと同年人口の10%程度です。自分の将来には大学院という学歴は必要ないと考える大学生が多いからです。同じように確信をもって大卒学歴を求めない高校生もいる。その生き方も尊重されるべきだと思います」

――学歴分断線をはさんで若い大卒と非大卒は、お互いをどう見ているのでしょうか。
「現在の60代以上では、非大卒家庭出身で大卒になった『大卒第一世代』が70%ほどを占めています。彼らは、農業や工場労働の出自から、ホワイトカラーへと地位上昇を自ら体験した世代です。分断線を超えて上昇したから、両方の世界が見えており、社会全体の構成がわかっています」
「一方、20~30代では、大卒家庭で生まれ、当然のように大卒になった人たちが半分以上になり、同年代の半分を、非大卒が占めていることを実感できていない。だから、非大卒層が社会を維持するための重要な仕事を担うことへの敬意も薄く、『上から目線』で彼らを偏差値ゲームの脱落者と見ているか、そもそも視野に入っていないのかもしれません」

福島民友新聞社編集局編『東日本大震災10年 証言あの時』

福島民友新聞社編集局編『東日本大震災10年 証言あの時』(2022年、福島民友新聞社)が発行されました。紹介文には、次のように書かれています。
「東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から10年。今だからこそ語られる「あの時」の決断。福島県の被災市町村長らのインタビューで明かされる震災ドキュメント。 福島民友新聞社で連載した「震災10年 証言あの時」のうち2020年9月11日から21年3月1日までに掲載した25編、21年6月7日から10日まで掲載した「番外編」の3編を書籍化した」
貴重な証言集になっています。

私も、出ています。昨年2月18日と19日に掲載されたインタビューです。「2月18日福島民友インタビュー記事「政府の力が試された」
今読み返すと、えらくくだけた語調で語っています。インタビューの際に、聞き役の菅野篤司記者に、気を許しすぎたようです。また、私の発言をそのまま活字にしてあるので、関西弁のままです。
菅野記者は非常に厳しい記者ですが、私たちの立場も理解してくれました。10年間を振り返って、いわば「戦友」のような気持ちになって、気軽にしゃべったようです。

社風を変える

2月26日の日経新聞オピニオン欄、上杉素直さんの「社風変革、覚悟の「踊り場」」から。
・・・組織文化論に詳しい佐藤和・慶大教授によると、日本企業のカルチャーはとりわけ濃い。終身雇用でメンバーの入れ替わりが少なく、文化が守られやすい。採用や評価も同じ気質を求め、風変わりな社員もいずれ社風に染まる。
カルチャーに沿った行動パターンが確立されると、あうんの呼吸が成り立ち、冗長な指示は要らなくなる。業務の効率を考えればプラス要素が大いにある。半面、その怖さも知らなければならない・・・

・・・「不祥事の多くは悪意が原因でない。社会の変化に気づかず、規範に反する行為を慣性で繰り返す無意識から生じる」。佐藤教授の分析にはうなずかされる。
たとえば、システム障害を連発したみずほフィナンシャルグループはその企業風土を金融庁に糾弾された。「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」という指摘が正しいとして、そこに悪意は存在しない。
善悪で割り切れないからむしろややこしいともいえる。不祥事にまみれてカルチャーの刷新を誓うが、結局変革がかなわず、失敗を繰り返すケースはみずほに限らない。こびりついたカルチャーの「解凍」は簡単ではない。

だが、企業が自らカルチャーを解かし、改めるのは不可能でないはずだ。「企業文化を変える」と正面から唱えた損害保険ジャパンの取り組みは示唆に富む。
損保業界は厳しい環境にある。人口減少でパイが減り、自然災害の増加でコストが膨らみ、デジタル化で競争は激しさを増す。経営者が危機感を高めるところまではよくあるストーリーだ。
そこからの行動がユニークだ。西沢敬二社長が2018年、特別チームに命じたのは、いわば自画像を描き直す作業だった。合併を繰り返して誕生した損保ジャパンが誇れる強みは何か。大きく5社の源流にどんな精神が宿ったか。その上で、未来に向けてどんなカルチャーをめざすのか。
めざすカルチャーは、乱暴にいえば、従来の流儀をひっくり返すものだ。損保ジャパンはもともと上意下達のノルマ主義で知られ、市場シェア日本一が社員の誇りだった。このトップダウン型から、お客を基点としたボトムアップ型への転換が始まった・・・
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サントリー・みらいチャレンジプログラムの記者発表同席

今日は、サントリーのみらいチャレンジプログラムの記者発表に同席するために、福島県庁まで行ってきました。
この企画は、2021年から始まっています。私も、福島県分の審査員になっています。今日は、2022年度の募集を始めるにあたって、説明会を実施しました。

9日の福島民報と福島民友が、写真入りで伝えてくれました。ありがとうございます。

先日、2021年の助成先からの中間報告を読んだのですが、人と会う、人を集める企画が多いので、このコロナ禍でそれぞれ苦労しておられます。