笑えるけど笑えない、無駄な会議

2月13日の朝日新聞「無駄な会議撲滅への道:上 秘密文書が教えるダメ会議」から。
・・・会議の人数はできるだけ多く。少なくとも5人以上▽長くスピーチせよ。逸話や個人的経験を説明せよ▽前の会議の決定事項を再び持ち出し、決定の妥当性を問い直せ――。
これはダメな会議について記した啓発書の一節ではない。米中央情報局(CIA)の前身の情報機関「戦略事務局(OSS)」が作成した秘密文書の内容だ。
題して「簡易サボタージュ・マニュアル」。1944年に作成され、様々な妨害手段を講じて敵国や敵組織を弱体化させるための具体例が記されている。情報機関が当時、ダメな会議のパターンを見抜いていたのだ。会議についての妨害工作も列挙されていた。
例えば会議を長引かせる方法は、「関係のない話を可能な限り持ち出せ」「文書や議事録、決議の細かな言い回しについて掛け合え」とある。無駄な会議をつくる手法については、こうだ。「正規の手続きを経るよう要求せよ。決定の最短経路を選択させるな」「重要な業務があるときほど会議を開け」・・・

ダメな例が列記されています。
会議では、演説をして経験談など長話をする。すべての案件を会議にかけ、さらなる調査を求める。一人でできるのに、3人の承認が必要な手続きにする・・・
上司では、延々と質問し長話をする。重要でない仕事から始め、重要な仕事は非効率な作業者に割り当てる。すべての規則を一字一句まで適用する・・・

読んでいて、笑えますね。
私は『明るい公務員講座 仕事の達人編』で、職場の無駄として、会議、資料作り、パソコンの3つを挙げました。無駄な会議をなくす方法を書いたので、参考にしてください。
一番の方法は、会議を開かないことです。次に、人数を絞り、終わる時間を決め、結論を書くことです。無駄な会議は、この逆をやってください。

なお、この秘密文書を元に、対応策を書いた本があります。R.M.ガルフォードほか著『アンチ・サボタージュ・マニュアル 職場防衛篇: 組織を破壊から守る9の戦術』(2018年、北大路書房)

民主主義国家は団結せよ

2月13日の読売新聞言論欄、アメリカの政治学者、ラリー・ダイアモンドさんの「民主主義国家は団結せよ」から。

・・・20世紀の潮流は民主化でした。特に1989年の冷戦終結後、民主主義は旧社会主義圏に一気に拡大した。94年頃には人口100万人超の国々の過半数が「選挙民主主義」の基準を満たします。複数政党の参加のもとで普通選挙を実施するという、民主主義の最低限の基準です。20世紀末、その数は6割を超えました。その中に、法の支配・基本的人権の尊重・政治的自由の保障などを実現した「自由民主主義」が含まれます。米国、西欧、オーストラリア、日本、台湾などはここに分類できます。
21世紀に逆流が起きます。
東南アジアで言えば、タイは2006年のクーデターで軍の支配に後戻りし、民主主義の歩みを始めたミャンマーは21年に軍が権力を握り直した。選挙民主主義国は今日、5割を切っています。
質も劣化した。為政者が説明責任を 蔑ろにし、任期を破棄して居座り続け、権力を乱用する傾向がある。腐敗も伴います・・・

・・・民主主義の後退の一つの要因に経済の不振があります。民主主義と資本主義は車の両輪です。新参の選挙民主主義諸国は中間層が薄く、教育程度は低く、民主主義の土台はもろい。景気後退で民主主義は言わば侵食されてしまう。欧州連合(EU)で言えば、ユーロ危機後のハンガリーとポーランドが該当します。両国とも権威主義に染まりつつある。
世界的には経済グローバル化で不利益を被った大衆の不満がある。職を失い、生活に困窮すれば、移民を敵視するようになる。大衆の不安を糧に右翼ポピュリストらが横行し、グローバル化を非難し、移民排斥を叫び、民主主義をエリート支配と糾弾する。4月の仏大統領選を争う国民連合のマリーヌ・ルペン氏はその一人です。
トランプ前米大統領は右翼ポピュリストの代表です。大衆の心に響く言葉遣いの巧みな扇動家です。16年の大統領選で負かした、ヒラリー・クリントン元国務長官は有能な公僕でしたが、国家指導者に必要なカリスマがなかった。
米国はトランプ前政権の4年間で政治対立が先鋭化し、SNSを通じて党派的な情報・虚言が拡散して社会分断が深刻化した。民主主義は劣化しました・・・

・・・民主主義は権威主義にも脅かされています。最大の脅威は中国です。習近平氏はアジアの覇権樹立に加え、世界支配の野望さえ抱いているように見えます。
特に台湾が危うい。台湾問題は20世紀半ばの朝鮮戦争に並ぶような、世界秩序を左右する危機へと拡大しかねないと私は考えます。この点で、米国が昨年、日豪印3か国と構築した外交安保協力体制「クアッド」を私は高く評価します。アジア太平洋地域での中国の強引な軍事的拡張を抑止するための重要な戦略的一歩です。
権威主義諸国からのサイバーテロを含む侵犯行為に対抗し、民主主義の後退に歯止めをかけるためにも民主主義諸国は団結すべきです。バイデン大統領が昨年末にオンライン形式で開いた民主主義サミットはその試みです・・・

引っ張るリーダーと支えるリーダー

2月10日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」ALE・岡島礼奈社長の「メンバーの力を引き出す」から。

・・・リーダーには自分についてこいというタイプと、メンバーを支えながら進めていくタイプの2つに分けられると思います。私は完全に後者です。会社は社長の器より大きくならないと言われますが、私はそうは思いません。自分よりも優秀な人を集め、さまざまな意見を取り入れて事業を拡大させていきたいです・・・

もっとも、この会社の方向を示しているのは、岡島社長です。この発言では、謙遜しておられますが。
先頭に立って引っ張ることと、部下を前に立てて後ろから支える。この二つの兼ね合いが、リーダーや管理職の役割です。

次のようなことも言っておられます。同感です。
「リーダを目指すあなたへ」
経営者仲間、同世代の人、先輩など、様々な人からアドレスをもらうことです。修羅場を含めて実際に経験していく中で成長するしかないと思っています。生まれながらの経営者はいないのではないでしょうか。

分野ごとに違った主体がつくる世界の秩序

2月4日の日経新聞、イアン・ブレマーさんのインタビュー「米主導の秩序、二度と戻らず」に次のような主張が載っています。

――世界に調和できないルールが乱立するおそれはありませんか。
どんなルールかによる。我々は気候変動についてのルールを作り始めており、その動きの大半は米国の外で起きている。サプライチェーン(供給網)は中国、規格や基準づくりは欧州の存在がそれぞれ優勢だ。どの企業やエネルギーに投資したいかは銀行が決めている。北京とワシントンで「ポスト炭素エネルギー」のルールを決めることにはならない。
一方、将来の安全保障環境では米中の関与が大きい。例えば中国が主張する南シナ海での権益をどう扱うかなどの課題では、多額の軍事費を投じる米中がルールを仕切る。欧州勢や日本は大きな支出もしていないので大きなことは言えない。この分野では米国は非常に支配的な存在だ。

つまり、これから我々は単一で一貫したグローバル秩序ができるのではなく、課題ごとに違ったタイプの参加者がルールを決める時代に入る。
最も問題含みなのがテクノロジーの分野だ。ルールは企業が決めることになる。デジタルの参加者がバーチャルの世界で自治権を行使する一方、いかなる政府部門も何ら大きな影響力を及ぼせない。もしこの傾向が2030年まで続くなら、世界各国の政府はほんの一握りの企業と権力を分け合う。企業はデータに関するあらゆる点で主権を真に握る。

――人類にとってそれは良いことですか。
はっきりしない。いくつかの分野では政府部門の力は衰え、テック企業は一段と自由に振る舞える。テック企業は米中関係でもより大きな役割を演じる。企業はグローバルな「つながり」の確保を重視し(米中による)戦争や冷戦の可能性を下げるだろう。
一方、企業は市民に対してでなく、第一に株主に対して責任を負う。彼らのビジネスモデルが不平等を深め、市民や国家の個別の利益を頻繁に混乱させる。民主主義も確実に傷める。

国立公文書館、近現代の文書管理の歴史

先日、国立公文書館に行ってきました。企画展「近現代の文書管理の歴史」を見るためです。官僚の一人として、公文書の作成や保管には関心があります。かつて知人が働いていたこともあり、何度か訪れています。

今回の展示は、明治以降の国家の公文書の変遷です。どのような様式が定められたか、どのように保管されたのか。勉強になりました。明治6年の宮殿の火事、大正の関東大震災、敗戦と焼却。保管されていたたくさんの文書が、灰になってしまいました。
昔から「文書が多すぎる」と、その是正をするための行政改革がされていたことも、驚きでした。

公務員でなくても、近現代史が好きな方には楽しめます。無料です。お土産には、平成と令和の文字が入ったクリアファイルなどもお勧めです。
国立公文書館の業務を簡単に紹介した動画があります。これは分かりやすいです。こちらも、ご覧ください。