2月3日の朝日新聞文化欄、脳研究の川島隆太・東北大研究所長の「オンラインの会話、心は通じるか 視線・音声のズレ、実は孤独に?」から。
・・・ 私がCTO(最高技術責任者)を務める、東北大と日立ハイテクによる脳科学ベンチャー「NeU(ニュー)」で開発した脳活動センサーを使って見てみると、よいコミュニケーションが取れている時はお互いの脳活動がシンクロし、揺らぎが同期するという現象が起きる。対面で顔を見ながら会話しているときは、5人の脳反応の周波数は同期していたが、オンラインではそれが一切見られなかった。
脳活動が同期しないということは、オンラインは、脳にとってはコミュニケーションになっていないということ。つまり、情報は伝達できるが感情は共感していない、相手と心がつながっていないことを意味する。これが多用され続ければ、「人と関わっているけど孤独」という矛盾したことが起こってくるのではないかと推測する。
同期しない理由の一つが視線。心理学でも、コミュニケーションの場面では、視線が合うことで共感が得やすい、といわれる。オンラインではカメラを見て話せば視線は合うが、画面を見るとずれてしまう。これが大きな違和感になる。
もう一つは、どうしても音声と画像がズレてしまうこと。脳にとっては、紙芝居が声がずれた状態で演じられているようにしか感じられないのだろう。
SNSの利用も増えたが、仕事や勉強などと並行することが多く、メインの作業への「割り込み」になる。スイッチがあっちに入ったりこっちに入ったりする「スイッチング」が増えるほど、注意能力が下がり、原因は解明されていないが、医学的にはうつ状態になりやすいと言われる・・・