今野元著『ドイツ・ナショナリズム 「普遍」対「固有」の二千年史」』(2021年、中公新書)の「はじめに」に、次のような記述があります。
・・・本書の鍵概念は西欧的=「普遍」的価値である。これは私の造語で、歴史的に西欧(英仏米)で生まれた、その意味では西欧「固有」の政治理念でありながら、西欧の影響力の大きさゆえに、近現代世界で「普遍」的に妥当すると主張されている価値のことである。それぞれの時代や地域において、西欧的=「普遍」的価値を推進しようとする勢力が進歩派(左派)であり、それを抑制しようとする勢力が保守派(右派)である・・・
・・・ちなみに私のいう西欧的=「普遍」的価値は、日本国憲法では「人類普遍の原理」と呼ばれているが、ドイツ連邦共和国では「西欧的価値」(westliche Werte)と呼ばれている。日本で「西欧的価値」と呼ばないのは、異国「固有」のものが自国に押し付けられているという語感を出さないための工夫だろう。だが、西欧中心主義的気風が強い現代ドイツでは、西欧のものが「普遍」妥当性を持つのは当たり前だと考えられているので、わざわざ「普遍」的などと言う必要を感じないのである・・・