長谷川真理子著「私が進化生物学者になった理由」(2021年、岩波現代文庫)をお勧めします。長谷川真理子さんは、元早稲田大学教授、総合研究大学院大学学長。その半生記です。生物好きの少女が、生き物を対象とする研究者になります。しかし、そう簡単な道のりではありません。
今では考えられない「男社会」の中を、生き抜いていきます。女性には、学者や研究者の門が閉ざされていたのです。長谷川さんも、研究をあきらめ、教育者として生きていきます。
さらに、「既存学界」の壁にもぶち当たります。通説を批判すると、長老たちから笑われ、無視されるのです。それも理屈ではなく、「長老たちのお師匠さん」を批判することは許さないという理屈です。
日本の学界、それも自然科学の分野で、こんなことがあったのだと驚きます。その意味でも、貴重な記録です。