組織がつく嘘、上司の責任

国土交通省の建設工事受注動態統計調査書き換え事件、三菱電機での品質不正、日立製作所子会社での検査不正・・・。役所や企業での嘘をつく行為が続いています。

日本人は正直だ、日本の組織は倫理観が高いといった、これまでの通説を覆す事案です。これまで行われていた不正が表に出たということで、現在が悪いのではなく、過去から悪いことをしていたのです。ということは、日本人の職業倫理観が高いという通説は間違いだったのか、どこかの時点で悪化したのでしょうか。

三菱電機の調査委員会報告書では、「ビジネスの根幹に関わる倫理観や規範意識が低下していた」と批判しています。読売新聞記事「三菱電機、不正5製作所29件…検証報告書「倫理観や規範意識低下」」(12月24日)には、次のようにも書かれています。
・・・調査委が全従業員向けに実施したアンケートの回答内容を、会社に提出するよう上司から求められたとの相談も複数寄せられた。「従業員が率直に声を上げることを良しとしない考えが表れている」として、厳重な注意を行ったという。
「不正をやめたい」と管理職に進言したところ、逆に 叱責 を受けた担当者もいた。管理職に相談しても問題解決が期待できず、「言ったもん負け」の文化があるとの指摘は、前回報告に続き、今回の調査対象の製造拠点でも確認された・・・

12月30日の朝日新聞は、1面でその原因を解説していました「繰り返される不祥事、声上げられぬ社員「上層部は自己保身に走る」」。
・・・大企業で不祥事が繰り返されるのは、社員が声を上げられず、経営陣の問題意識も低いためだ。各社の調査報告書は「上にものが言えない」問題を指摘する。
三菱電機の調査委員会の報告書は、不正を知っても通報できなかった社員の声を紹介している。「上層部が自己保身に走る」として信頼されず、組織にとって都合の悪い情報を吸い上げられなかった。
みずほ銀行では、2月に4千台以上のATMが停止した際などで顧客への周知が遅れた。藤原弘治頭取が障害を知ったのはネットニュースだった。調査報告のアンケートなどでは、経営陣に忖度する「内向きの姿勢」があったという。

東京電力ホールディングスでは再稼働をめざす柏崎刈羽原発(新潟県)で、社員が他人のIDカードを使って中央制御室に入っていた。侵入者を検知する装置の不備が放置されるなど、「核セキュリティー」の基本が守られていなかった。
東電の「核物質防護に関する独立検証委員会」が9月に出した報告書からは、社員の苦悩が伝わってくる。アンケートで「正直にものを言えない風土があったと感じるか」についてたずねたところ、柏崎刈羽の役職員の27%が感じている(「どちらかというと」を含む)と答えた。組織が責任を回避し個人に「丸投げ」していると感じている人もいた・・・
この項続く