ジュリオ・トノーニ、 マルチェッロ・マッスィミーニ著『意識はいつ生まれるのか ー 脳の謎に挑む統合情報理論』(2015年、亜紀書房 )を読みました。
脳の働きって、不思議ですよね。神経細胞などの仕組みが、徐々に解明されています。聴覚や視覚のように音声や映像を伝達することは、電話やカメラの仕組みのようなものだと分かるのですが。この本が扱っている「意識」は、そのような機械的な類推では理解できません。
脳のどこかの部分が、意識をつくり操作しているのではないか。と私は思っていましたが、どうやらそうではなさそうです。
起きて物を見ながら考える、目を閉じてあることを考える、寝て夢を見る。それぞれに脳は活動しているのですが、その違いは何か。どうして夢は、意識していないのにいろんな場面を映し出し、かつ荒唐無稽な場面をつくるのか。私は最近、長時間寝るので、変な夢を見ることが多いのです。
目を開けて見ている景色には、たくさんの物が含まれています。しかし、私たちの意識に登るのは、あるいは私たちが意識するのはそのごく一部です。その他の物は、切り捨てられます。脳は、この作業をどのようにして行っているのでしょうか。
他方で、目に見えているたくさんの物、あるいは記憶にあるたくさんの情報から、特定のものを選びだして、考えたり言葉に出したりします。この、選別して引き出し、統合する作業はどのようにして、脳のどの部分がやっているのでしょうか。「司令塔」があれば、分かりやすいのですが。もしあるとすると、その司令塔を動かしている司令塔はどこにあるのか。ということで、この考え方は行き詰まります。
この本は「統合情報理論」という考え方の説明です。なるほどと思うことが多いですが、他方で「まだまだ分からないことばかりだ」と分かります。
記憶も、どのようにして、細胞に記録されるのか。神経細胞を解剖しても、分からないでしょう。いつか、解明される日が来るのでしょうが。
研究が進むことを期待しましょう。