アパルトヘイトの廃止

デクラーク・元南アフリカ大統領が11月11日に亡くなったと、各紙が伝えています。11月12日の朝日新聞
・・・南アフリカのフレデリク・デクラーク元大統領が11日、西部ケープタウンの自宅で死去した。85歳だった・・・白人政権の最後の大統領として、アパルトヘイト(人種隔離)政策廃止へと導いた。民主化や改革路線の功績が認められ、故ネルソン・マンデラ氏とともに1993年にノーベル平和賞を受賞した・・・在任中は、27年に及ぶ獄中生活を続けていたマンデラ氏を釈放した。アパルトヘイト政策の廃止や、人種間の融和に努めた。朝日新聞の取材に「(アパルトヘイトを廃止しなければ)南アはさらに孤立を深め、武力対立で多くの人が命をなくし、経済は崩壊していただろう」と語っていた。さらに、南アが極秘に開発していた核兵器の廃棄も決めた。「共産主義の脅威が去り、南アが国際的地位を築くために(核兵器)保有は足手まといになった」と理由を述べた。
南アフリカでは94年に初の全人種参加選挙が実施され、マンデラ政権が誕生。デクラーク氏も副大統領に就いた・・・

13日付の松本仁一さんによる評伝には、次のように書かれています。
・・・4世紀にわたる少数白人支配をやめ、黒人勢力に権力を渡す決断をしたフレデリック・デクラークは、たまたま大統領の座についた政治家だっ・・・1989年、ボタが病で倒れ、大統領の座が回ってきた。「閣僚中の最古参だから」というだけの理由だった。
しかしそこから、歴史に残る大決断をする。アフリカ民族会議(ANC)の合法化、ネルソン・マンデラの釈放、アパルトヘイト廃止――。それまでだれもできなかったことを、2年の間に成し遂げたのである。
決断の契機になったのはマンデラとの極秘会談だった。政権についた直後の89年10月、終身刑で服役中のマンデラを大統領官邸に呼ぶ。その時の様子を、デクラークは私にこう語った。
「マンデラは、刑務所長が運転するBMWの後部座席で毛布をかぶって身を隠し、官邸の地下ガレージに乗り入れました。そこから大統領専用エレベーターで執務室に入ってきました。ずいぶん背の高い男だという印象でした」話を始めて、マンデラが頭のいい人間であることがすぐ分かった。この男だったら信頼できると感じたという。
80年代後半、黒人の暴動が各地で起きていた。南アは国際的な制裁の中で孤立し、社会は荒れた。国の将来を考えたら、権力の平和的移行しか道は残されていないと思っていた。
「アパルトヘイトは廃止しなければならない。それも小出しにではなく、ひとっ飛びにやらなければいけないと考えました」大統領である今ならそれができる。デクラークは、たまたま巡ってきたチャンスにすべてをかけた。
最大の懸念は、政権を渡した後、白人に対する暴力的報復が始まること、そして黒人政権が共産主義化することだった。マンデラに何度も念を押す。ANCの中には反対もあったが、マンデラが抑え込んだ。マンデラを信頼するしかないと腹を決めた。
決断が間違っていたらどうするか。国民への責任を考えると胃が痛くなり、眠れない夜もあったという。「結局、判断は正しかった。あの決断をしたのが自分であることを、私は誇りに思っています」・・・

平和裏に革命を起こしたのです。権力を持っている人たちが、歴史の流れを読んで、その権力を譲り渡す。なかなかできることではありません。

行き場のない少女、ホームレスへのワクチン接種

11月9日の朝日新聞夕刊1面に「家庭内暴力や虐待、行き場失った少女たち」が載っていました。
・・・ 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除されても、家庭内での暴力や虐待を受ける児童の相談は後を絶たない。10代少女らの支援のため一般社団法人「Colabo」が東京・歌舞伎町で開催するカフェには、行き場を失った少女らが身を寄せる。深夜の活動に同行した・・・
・・・家族の暴力から逃げてきたり、家出したものの生活費がなくなったり、集まる子の理由は様々だ。15歳の少女は児童相談所に家庭内の虐待を相談したが、対応してもらえず、家出した。知り合った男性宅やホテルを転々とし、生活費のために年齢を偽りバイトしているという。17歳の少女は生活費に困り、駆けつけた。「学費のための奨学金を親が彼氏に使い込んでいる」という。生活費を抑えるため、十数人でビジネスホテルの一室を借り宿泊している少女たちもいた。
「親のテレワーク」と「子どもの休校措置や短縮授業」が重なり、家庭内でのトラブルや暴力が増え、虐待につながっているという。「Colabo」代表の仁藤夢乃さん(31)は「親の経済状況が悪化し、しわ寄せは子どもたちに来ている」・・・
・・・高校を中退し、親からの虐待の影響で自殺未遂経験がある18歳少女のSNSには「コロナに感染できたので、ホテル療養になれて、家から離れられた」とあった・・・
・・・「既存の支援から、こぼれ落ちている子どもたちが増えている」と仁藤さんは懸念。「24時間対応する窓口を設けるなど、若年女性への公的支援の拡充が急務」と指摘する・・・

このような人たちをどのように見つけ、支援するのか。重要で難しい課題です。
他方で、次のような記事もありました。11月12日の朝日新聞「家がなくてもワクチン打てます ホームレス状態の人へ接種、自治体対応
・・・路上やネットカフェなどで暮らすホームレス状態の人たちへの新型コロナウイルスのワクチン接種が東京都内の自治体で進んでいる。定まった住所がないため、住民票に基づいて発送されるワクチン接種券を受け取れないことなどが壁となり、接種が進んでおらず、厚生労働省が自治体に対応を求めていた・・・豊島区では6月から住民票や身分証のない人への接種券の発行を開始した。これまでも約100人に対して接種券を発行してきたが、接種についてはいずれも住民向けの会場を案内しており、今回のような集団接種は初めてだった。集団接種の日時や会場は、支援団体が炊き出しの際などにチラシを配布して周知した。
豊島区の場合、住民票や身分証がない人は、本人の申し出による名前と生年月日をもとに、接種券を発行する方式をとった。担当者は「希望しても接種にたどり着けていない人が多くいることが分かった」と言い、今後も接種券の発行を受け付ける。
東京都内には約860人(今年1月現在)の路上生活者がいるとされる。
台東区では、身分証がない場合の本人確認に一手間加えた。接種券の発行の際、名前と生年月日のほか、本籍地や両親の名前など本人しか知り得ない情報も聞き取った。接種当日にも同じ質問をすることで、その回答と照らし合わせて本人確認をしたという。こうした手法で接種券を発行し、10月上旬には接種を希望するホームレス状態の人ら85人に対して2回目の集団接種を終えた・・・

お酒も訓練が必要

NHKウエッブニュースに「私、こんなに弱かったっけ? 久しぶりの居酒屋で」(11月17日掲載)が載っていました。

・・・緊急事態宣言がすべて解除されて1か月余り。久しぶりに会った友人や仕事帰りに職場の同僚と一緒に、居酒屋で楽しくお酒を飲んでいたら・・・。
「あれ。私、こんなにお酒に弱かったっけ」酔った中で感じたことありませんか?
その感覚、実は間違いではないかもしれません・・・

・・・都内でクリニックを営む高山哲朗医師に聞いてみました。
「久しぶりに飲むとお酒に酔いやすくなるのは一部の方について言えば本当です。もともと飲めない人とお酒に強い人がいます。日本人は結構な割合で飲んでるうちに、だんだん強くなるとか、お酒に慣れる方が多いようなことが遺伝的にわかってきています。そういう方がしばらくお酒から離れると弱くなってしまいます」
高山医師は日本人の特性に加え、アルコールの分解にも関わる酵素の働きが鍵を握っているといいます。
「お酒を飲んでいる時は、酵素がアルコールを分解する活動をいっぱいしてくれますが、お酒を飲まなくなると活動しなくなります。久々に飲む場合は酵素が十分に働かず、結果としてお酒に弱くなってしまう人が出てきてしまいます」・・・

実は、半年近く夜の意見交換会を中止していた私も、同じ「症状」なのです。「訓練」を再開しているのですが、なかなか元には戻りません。
キョーコさん曰く「飲まなければ、よいのよ」。
はい、ごもっとも。

異分野の合作で新しい知見が生まれる

11月2日の日経新聞「変わる地方国立大学」、斎藤滋・富山大学長の「革新創出へ文理融合」に次のような指摘があります。

・・・今日、トップ論文が載る研究雑誌では単一大学の単一講座(教室)からの報告は皆無となっている。複数の大学、講座、専門分野の異なる研究者の合作で新しい知見が生まれてきているのだ。
日本の大学では単一講座(教員)の指導で研究が行われてきたが、学問の進歩は複合的な解析を不可欠とし、異分野の学問領域の融合が世界的に行われている。日本の国際的な遅れは、この融合するという意識の低さが原因の一つである・・・

国家公務員のためのマネジメントテキスト

内閣人事局が、管理職研修の教科書を作りました。「国家公務員のためのマネジメントテキスト」(11月16日公表)。「発表資料
作成の趣旨は、発表資料に書かれているとおり。働き方改革を推進するためには、「マネジメント改革」と「業務の抜本見直し」が必要だと分かりました。そのマネジメント改革の一つです。

私の連載「公共を創る」でも指摘しているように、日本社会は先進国に追いついき、右肩上がりが終わりました。手本に向かって全員が団結して進むという形が、成熟社会にそぐわなくなりました。
振り返ってみると、企業でも官庁でも、管理職研修は本格的・系統的に行われてきませんでした。「先輩のやり方を見て覚える」でした。また、かつての職場は、大卒は幹部候補、高卒と中卒は基幹要員、女性は補助という3経路で人事を管理していました。これも、進学率の向上、男女共同参画の進展で、成り立たなくなりました。
21世になってそれが顕在化し、企業でも官庁でも管理職のあり方が再検討されるようになったのです。管理職に管理職の仕事をさせるのです。
職場慣行も、メンバーシップ型からジョブ型への移行が進められています。雇用と労働における「この国のかたち」が大きく変わろうとしてます。

内閣人事局の幹部候補研修のうち係長級と補佐級については、私が研修講師を務めたビデオ教材を作成しました。近いうちに、研修を実施するようです。