商売、ブームになると飽きられる

10月5日の読売新聞『経営者に聞く」は、回転ずし首位の「スシロー」運営会社の水留浩一社長でした。「いいネタ安く 終わりなき戦い

・・・競争の激化を懸念する声はあります。しかし既存店の売上高は、前年度比プラスを維持しています。店舗数は、現在の約600店から、800店以上に増やせると考えています。
スシローの客単価は1000円超で、それほど高くはない。お客さまには日常の中で楽しんでもらいたいのです。「今日はお母さん、仕事で遅くなったからスシローに行きましょう」という形で、気軽に利用していただきたい。
その意味で、一時のブームにしてはいけないと気をつけています。スシローに行くのが「かっこいい」と捉えられると、いずれ「もう古い」と飽きられてしまいます・・・

・・・<全く未経験の回転ずし業界に転じたのは、幾つか受けた提案の中で、一番可能性があると判断したからだ>
海外の都市を訪れる度に、日本ほど良心的な価格でおいしいものが食べられる国はないと感じていました。安全や衛生、自動化などの技術でも優位性があります。すしは日本起源の料理として知名度があり、うまく輸出できたら高い競争力を発揮するはずだと思ったのです。

製品はコピーされたらおしまいですが、サービスは簡単にまねできません。従業員をトレーニングして味や接客を再現するには、ものすごく手間がかかります。外食をはじめとするサービス産業は、日本から海外に打って出て戦える最後の業界ではないでしょうか。その突破口をスシローが開きたいと考えています・・・

個人による安全網、日中の違い

10月5日の日経新聞オピニオン欄、本社コメンテーターの梶原誠さんによる「恒大が暴く「富む前の老い」」に次のような話が載っています。

世界の株式市場を揺らした中国恒大集団の経営危機が、世界の株式市場を揺らしています。中国国内では、深圳にある恒大本社に人々が詰めかけています。「カネを返せ」と抗議をやめない人、社屋に乗り込む人、抵抗して警官に引きずり出される人。恒大が販売した「理財商品」を購入して財産を失いかねない人たちです。
中国人には、「日本はなぜ失われた30年を、社会不安もなく過ごせたのか」と不思議に思う人もいるそうです。その背景を、梶原さんが説明します。

日本はバブルが崩壊する前に豊かになっていたから、なんとか耐え抜けた。
1990年に家計が保有していた金融資産は1000兆円強。国内総生産(GDP)の2.2倍で、一人あたり800万円強。昨年は2000兆円弱と、GDPの3.7倍、一人あたり1500万円台に増えている。中国も増やしてきたが、2018年の資産は2300兆円台でGDPの1.6倍、一人あたりは170万円弱にとどまる。
中国でのGDPに対する保険料の割合は4.5%で、日本や世界の6割以下。生命保険などの普及が遅れています。

電子メールでのやり取りの作法

電子メールは、便利ですよね。電話と違い、相手の都合を確認することなく、発信者の都合のよいときに打つことができます。そのことによる、受け取る側の迷惑について、そしてその対処方法については、『明るい公務員講座 仕事の達人編』で書きました。

電子メールでのやり取りが定着してきて、その作法も磨かれてきました。やたらとCC(同報)しない、親しい人とは冒頭の挨拶文を省略するなどです。
今日の話は、時に悩む次のようなことです。
親しい人に、お願いのメールを送ります。急ぎの場合は、「○日までにお願いします。可能でしょうか」とか、「返事ください」といった文言を入れておきます。
問題になるのは、「急いでいません。○日までで結構です」といった内容の時です。しばらく返事が来ないときがあります。多くは、作業をしていてくれるのですが、返事が来ないと、「届いてないのかな」「何か返事できないことがあるのだろうか」と心配になります。

私は、依頼があった場合は、直ちに返事できるものは、すぐに返事します。しばらく時間がかかりそうな場合は「メール受け取りました。しばらく時間ください」と、まずは受け取ったことの返信を送っておきます。

子どもを産みにくい日本

10月3日の日経新聞1面「チャートは語る」は「育児男女差際立つ日本」でした。わかりやすい図が着いています。ご覧ください。

・・・様々な社会要因のなかでも男性の育児や家事など家庭進出の度合いが出生率に影響があることは大きなヒントとなる。
女性に家事や育児の負担が偏るのは、程度の差こそあれ多くの国や地域で根強い。見逃せないのは、その差が男女で大きくなればなるほど少子化が進みやすいことだ。
経済協力開発機構(OECD)のデータ(19年)で日本と韓国の男女差が際立つ。日本の女性が家事や育児に割く時間は男性の4.76倍、韓国は4.43倍にのぼる。ともに男性の参加時間は女性の2割ほどの計算だ。両国とも急速な人口減少につながる出生率1.5を下回り、韓国は20年の出生率が0.84まで低下した。男女差が2倍以内の国ではおおむね出生率1.5以上を維持している・・・

・・・日本の場合、子育て支援に注ぐ予算が十分とはいえないことも問題視されてきた。OECDのデータ(17年)では、児童手当や育休給付、保育サービスといった日本の家族関係の公的支出は国内総生産(GDP)比1.79%。比率ではフランスやスウェーデンの約半分の水準にとどまる。
支出が多い国は出生率も比較的高い。問題はその使い道だ。ドゥプケ教授の研究では、保育所整備などを通じて母親の負担を減らすほうが父親への給付金支給より出生率の押し上げ効果が高いうえ、政策に要するコストは約3分の1に抑えられるという。
男性が家事育児に参加しやすい環境づくり、そして子育て関連予算の充実と効率的な配分――。日本の出生率向上にはこの両輪が欠かせない・・・

部下の前に上司を育てる

10月4日の日経新聞に、「働きがいは何ですか(3)ライオン、まず上司を育てる 上下の壁壊し 能力発揮 全管理職に半年間の実習」が載っていました。管理職には、ぜひ読んでいただきたい内容です。

・・・管理職は本当に部下を理解し育てているのか――。2019年に「働きがい改革」を始めたライオンは、全管理職600人に、部下との関係を6カ月かけ再定義する「関係性向上プログラム」参加を義務付けた。職場の人間関係が働きがいを左右すると考える企業はライオン以外でも増えている・・・

・・・約130年の歴史を持ち「社員の愛社精神も非常に強い」(関屋氏)ライオンが働きがい改革を始めたのもそのためだ。同社の考える働きがいは、社員が企業人、家庭人として充実した生活を送り、自ら成長していくというもの。上下の関係性を改善して認め合い「部下が本音で話す心理的な安心感が必要だ」(関屋氏)。「100年後も歯磨きの会社でいいのか」との問題意識も強く、働きがいを感じ、能力を発揮できる若手を増やすことが事業変革につながると期待する。
新任管理職を対象とした以前の研修で「(さらに上のクラスの)上司が変わらねば新風土は醸成できない」と指摘され、関係を築けぬ上司が阻害要因になる危険性は分かっていた。
そこで同社は(1)部下の考えを取り込みながら未来を示す「オーセンティック(信頼感のある)リーダーシップ」を打ち立てる(2)異なる職場でも部下への接し方に差がないようにする――を目標とする独自プログラムを今夏から始めた・・・
・・・上司が変われば部下との関係性は改善するか。研究開発本部ではその効果を示すような経験があった。
同本部人事担当の田淵照人副主席研究員は「18年の調査で『キャリアへの助言が不十分』などの声が出て、若手の働きがいの低下が判明した」と話す。対策として管理職に部下への関心を高めるために、部下に対し1~2週に一度のインタビューを継続させたところ「上司の壁が低くなり改善が確認できた」・・・

記事には、「仕事の満足度左右 上司→部下の理解不足」の数値も載っています。
ある調査では、上司から理解されていないと感じる従業員で「職場に満足」と答えた割合は6%です。反対に、上司に理解されていると感じている従業員は68%が満足しています。
では、どの程度の上司が部下を理解しているか。「上司は自分を理解している」と答えた部下は42%、「理解していない」が25%、「どちらでもない」が33%です。
部下が上司に理解してほしい点の上位3つは、「これまでの業務」「業務への希望・不満」「性格」です。(カオナビHRテクノロジー総研、2018年末の調査)