政府と医療界の責任、病床を確保する

10月8日の日経新聞「しがらみ排し医療再建 コロナとの共生へ耐久力を」から。

・・・医は仁術ではなく算術だった。日本に新型コロナウイルスが上陸してからの医療界の動きを振り返ると、残念ながらこんな言葉が思い浮かぶ。
多くの医療機関でコロナへの対応よりも経営が優先された。政府が病床確保、オンライン診療の導入といった対策を実施しようとするたびに、経営上の損得という算術が大きな壁になった。
ワクチン接種など医療機関の算術を満たす報酬を政府が示した場合、対策は大きく進んだ。そうでない政策は空回りした。病床確保を前提に補助金をもらいながら、実際にはコロナ患者を受け入れずに収益を上げるという、仁術を全く感じられない病院も表れた・・・
・・・既得権の第一は医療機関の経営の自由だ。民間経営を理由に行政の指揮権が及ばない病院が8割もある・・・

欧米各国に比べ桁が少ない感染者数、欧米並みの病床と医者の数。なのに日本では、病床が足らない医療危機が叫ばれました。そして、指摘されながら、改善されたとは見えません。政府と医師会は、どのように説明するのでしょうか。

コロナ死、50代以下では8割が男性

10月10日の朝日新聞、新型コロナ欄に「働き盛りの死者、8割が男性 肥満や糖尿、ストレス影響も」が載っていました。

・・・東京都内で新型コロナに感染した死者を分析すると50代以下では男性が8割を占める。若年から中年の働き盛りの世代が重症化する要因の一つが、肥満や糖尿病とされ男性がなりやすい傾向にある。専門家は食生活の乱れやストレスが背景にあると指摘し、「誰もが直面しうる問題」と注意を呼びかける・・・
・・・こうした傾向の一因とみられるのが、重症化しやすいとされる肥満や糖尿病を抱える割合が男性の方が比較的高いことだ。都が9月に発表した50代以下の死者のうち少なくとも3割が肥満か糖尿病を抱えていた・・・

・・・男性の方が肥満や糖尿病になりやすいのはなぜか。
糖尿病や摂食障害の治療を続ける九州中央病院の野崎剛弘・メンタルヘルスセンター長は、ホルモン分泌の違いで男性の方が内臓脂肪が蓄積しやすい傾向にあると指摘する。
野崎氏は長時間になりがちな労働環境にも問題が潜むと警鐘を鳴らす。男性は健康診断で問題があっても自分の体を気遣う余裕がなく、自覚症状が出るまで放置しがちな傾向にあるという。本人が自覚しないままストレスをため、暴飲暴食する生活が常態化している患者も少なくないという・・・

市町村アカデミー学長に就任しました

今日10月14日付けで、市町村職員中央研修所(略称、市町村アカデミー)の学長に就任しました。

市町村職員中央研修所は、全国市長会、全国市議会議長会、全国町村会及び全国町村議会議長会の4団体が設立した市町村職員の研修所です。千葉市幕張にあります。姉妹校として、全国市町村国際文化研修所が滋賀県大津市にあります。
自治大学校が自治体の総合研修(階層別研修)を行い、市町村職員中央研修所と全国市町村国際文化研修所が、市町村職員の専門分野の研修を担っています。

私の職歴として、消防大学校校長、自治大学校校長に続く職員研修の職場です。皆さんの期待に応えるように、職員と一緒に努力します。

若者が話せる居場所をつくる

10月8日の読売新聞解説欄に「孤立させない 若者に「居場所」」が載っていました。
・・・中学高校生や20~30歳代の若者が安心して過ごせる「居場所」をつくる動きが、各地に広がっている。家庭の事情や友人関係の悩みを抱えて孤立した状態が続くと、高校中退や就労が困難な状況につながるケースも少なくない。行政と民間団体が連携し、多様な若者支援のあり方を考えていく必要がある。
スタッフや他の利用者とおしゃべりしていると、気が楽になる。家族についての愚痴も言いやすい」
さいたま市のNPO法人「さいたまユースサポートネット」の交流スペースを利用する男性(34)は語る。中学生の頃にいじめに遭い、学校を休みがちだった。高校卒業後はアルバイトなどをしていたが、心身のバランスを崩し、自宅から出られない日々が続いた。現在は就労継続が困難な人を支援する福祉作業所に通っているが、同居する親も経済的に苦しく、家族関係に悩みを抱える・・・

・・・「いじめなどをきっかけに自信を失い、家庭環境に恵まれないなど、様々な『生きづらさ』を抱えて相談の場に来る若者は20歳を過ぎていることが多い。学校を卒業すると社会との接点がなくなり、その期間が長いほど復帰に時間がかかる傾向がある」。さいたまユースの副代表で元公立中養護教諭の金子由美子さんは、そう話す。
特に高校を中退すると、正社員での採用が難しく、公的なサポートを受ける機会も減る。「地域の結びつきが薄れる中、家族自体が孤立し、支援が届かないケースは多い。必要に応じて福祉や医療、就労支援などに結びつける居場所をもっと増やし、周知していく必要がある」と金子さんは訴える・・・

・・・中学高校段階で早期のサポートにつなげることも大切だ。学童保育や児童館がある小学生までに比べて放課後などの受け皿が手薄なことに加え、ひとり親などで困窮する世帯や家族の面倒をみるヤングケアラーが増えている状況もある。
最近注目されているのが、NPO法人などが高校内で生徒を対象に開く「カフェ」。自宅でも教室でもない「第三のスペース」で、相談員やボランティアが雑談を通して生徒と信頼関係を築き、必要に応じて学校にも連絡し、適切な支援につなげる・・・

謝るが認めない日本型謝罪

10月6日の朝日新聞オピニオン欄「その謝罪、何のため」、梁英聖(リャン ヨンソン)さん(反レイシズム情報センター代表)の発言から。

・・・今回のテーマがもし「正しい謝罪のあり方は?」を問う内容なら、答えようがありません。その問題設定自体に、日本で人種差別の言動が止まらない原因の根がある、と思うからです。
「ご迷惑をおかけした」「不愉快な思いをさせた」といった謝罪を、私は「日本型謝罪」と呼んでいます。
欧米では、差別的言動があると、基本的に四つのステップで対処されます。まず(1)事実を調べ、(2)それがルール(社会正義や法)違反と言えるかどうかを判断する。
(1)(2)で差別だと判断された場合に限り、(3)「謝罪や処罰、賠償」と、(4)「再発防止」の策定に進む。
重要なのは、差別かどうか(1)事実と(2)ルールに基づいて判断を下すことです。差別でないなら謝罪などしない。差別なら(3)(4)の責任をとる。選択肢は二つに一つです。

ところが「日本型謝罪」はそのどちらでもない。(1)事実と(2)ルールによる判断を下さないまま、世間や相手の心情に謝罪する。謝るが差別は認めないので、将来も同じことを繰り返す自由が残ります。
(1)事実調査と(2)ルールこそ、将来にわたって差別・人権侵害をさせないという実効的な再発防止につながるわけで、これを回避すれば、何万回でも同じことが起きます・・・