10月9日の朝日新聞夕刊「真鍋さん、言葉濁した日本への思い」から。
・・・97年、真鍋さんは約40年ぶりに日本に戻り、科学技術庁(当時)の地球温暖化予測研究領域長のポストに就いた経験がある。だが、2001年秋、気候変動予測のスーパーコンピューター「地球シミュレータ」が稼働する前に辞任した。
《温暖化研究、第一人者失う》。当時の朝日新聞はそんな見出しで真鍋さんの辞任を報じている。
会見では国籍を米国に変えた理由も聞かれた。
「日本で人びとは常に、お互いの心をわずらわせまいと気にかけています。とても調和の取れた関係性です。日本人が『イエス』と言っても、それは必ずしも『イエス』を意味せず、『ノー』かもしれません」
「なぜなら、誰かの感情を傷つけたくないからです。アメリカではやりたいことができる。他人がどう感じているか、それほど気にしなくていい」
「米国で暮らすって、素晴らしいことですよ。私のような科学者が、研究でやりたいことを何でもやることができる」
「私は調和の中で生きることができません。それが、日本に帰りたくない理由の一つなんです」
会場が笑いに包まれる。真鍋さんは4秒間、観客を見渡した。笑わせようと冗談を交えたのか、あるいは本気で言ったのか。表情からは、読み取れなかった・・・