9月25日の読売新聞夕刊「紙で読む良さがある」から。
・・・ニュースや小説、書類を紙で読むか、デジタルで読むか、いつも悩ましい。そもそも、デジタルに比べて紙の方が優れている点って何だろう。読み書きメディアとしての紙とデジタルを比較研究する群馬大の柴田博仁教授に聞くと、それは「操作性」だという・・・
実験A
間違い探し。参加者は20〜30代の24人だ。同じB5サイズの紙とタブレット(iPad)で、1ページ分の文章から、文脈上おかしい点(「増加した」であるべきなのに「減少した」になっているなど)を探してもらった。
制限時間内の検出率は、紙のほうがタブレットより17・2%高かった。
実験B
2枚の文書(1ページ目が本文、2ページ目が注釈)を行き来しながら朗読をする実験で、紙とパソコンを比べた。ページを移動する際生じる中断は、紙のほうがパソコンより短かった。多くの人が2枚の紙の間に指をはさみ、読み終わる前にページをめくっていたことなどが理由と考えられる。
「目次のある本で『3章を開いてください』というと、ほぼ全員が、目次を見た後、目次に指をはさんだまま3章を開きます。もしページが違っていたらワンアクションで戻れます。習ったわけではないのに、身についている」
「目で情報を取るだけなら、紙でもデジタルでも、読むスピードや理解度はあまり変わりません。でも、読書の途中で著者情報を見たり、参考文献を見たりといったページを行き来する操作は、紙が抜群にしやすく、読みを阻害しない。デジタルは、ページをめくるなどの際、思考にプチプチ中断が入ってきます」
柴田教授自身が1年あまりの間「デジタルペーパーでだけ本を読む」という体験をしてみたそうだ。すでに持っていた紙の本も、250冊以上を裁断、スキャンして取り込んだ。
「私1人の例に過ぎませんが、気付いたことがいくつかありました。たとえば、自分が本のどのあたりの位置を読んでいるかがわからなくなりました。もちろん数字では『何ページ』と表示されますが、紙の本のように重さや厚さで感じるのとは違う。『終わりが来るぞ来るぞ』感もなく、いきなり終わったと感じたこともありました」