中東の安定と繁栄

9月18日の読売新聞解説欄、フランスの歴史家ジャンピエール・フィリユさんの「米軍アフガン撤退 「米国の中東」30年で幕」から。詳しくは原文を読んでいただくとして。
・・・米国のバイデン政権は米同時テロ20年を迎え、テロ直後に開戦し、米史上最長の戦争となったアフガニスタン戦争に幕引きをした。米国が20年前に政権から放逐した、イスラム主義勢力タリバンは米軍撤退の混乱のさなか首都カブールを制圧し、政権を奪還した。この 顛末てんまつ の歴史上の意味は何か。フランスの中東史の大家ジャンピエール・フィリユさんに読み解いてもらった・・・

――8月末の米軍のアフガン撤退完了で「米国の中東」は完全に終わった。
「復活はありません」
――米国の残した空白を埋める国はあるのですか。
「米国は圧倒的な大国でした。軍事・経済・金融・科学技術など全てに突出していた。代わり得る国はありません」
「ロシアはシリアのアサド政権の延命に深く関与した。だが真の戦争、つまり『イスラム国』との戦いは米英仏3か国が担った。ロシアは反政府勢力を空爆しただけです。和平を導く意欲はない。シリアは戦争でも平和でもない状況が続いています」
「中国は中東で派手に外交宣伝をしています。対米批判を重ねるばかりで、中東和平の代案を示すことはない。実際は商売最優先です。中国には中東政策がない。展望がない。例えばイスラエルやアラブ首長国連邦で港湾に投資していますが、それで両国が行動を変えることもない」
「世界の大国は中東を足場に立ち現れる。これは私の持論です。つまり中国は世界的大国ではない」
――中東の先行きは。
「第1次大戦後のオスマン帝国の消滅以来、中東は危機の連続です。しかも危機はその都度深刻化している。私の考える根本の原因は、中東の諸政権の『秩序』は民意を反映していない、つまり正当性がないことです。支配層は民衆を飢えさせ、異議を申し立てる民衆を弾圧してきた。アラブ人に限らず、トルコ人もペルシャ人も同様です。民意が尊重されない限り、中東に安定も繁栄も訪れません。暗たんたる思いです」

北日本政経懇話会で講演

今日22日は、北日本政経懇話会で講演するために、富山市に行ってきました。1994年から1998年まで県の総務部長を務めたので、思い出の地です。もう四半世紀前のことです。
ホテルの会場には約40人、オンラインで約60人の方が聞いてくださいました。富山時代にお世話になった方々が、何人か来てくださいました。

聴衆は経営者の方が多いので、演題は「東日本大震災から10年ー復興の姿と企業の役割」としました。
大震災から10年半が経ち、津波被災地での復旧工事はほぼ終わりました。その姿を報告するとともに、復興に貢献してくださった企業の役割を話しました。
企業は、支援金や支援物資という応援だけでなく、本業を早期に復旧することで、町の復興を支えてくれました。そして、被災企業の復旧にも、中古の機械や事務機器を送ってくださり、ノウハウなどの支援もしてくださいました。
産業の復興がないと、町のにぎわいは戻らないのです。
このような町のにぎわいづくりを、災害復旧以外でも進めていただくように、官民連携のよい事例をいくつかお話しして、お願いをしてきました。

久しぶりの富山だったので、知人何人かと会えました。ただし、コロナで行動制限が続いていて、飲食せず帰ってきました。残念。

はえ取り紙からマスキングテープへ

懐かしい会社に会いました。カモ井です。
私の子どもの頃は、各家庭でも、魚屋さんなどの店頭でも、必ずぶら下がっていました。はえ取り紙です。紙といっても細長いテープです。筒状にまかれているのを引っ張って伸ばし、天井からぶら下げます。強力な粘着剤が塗ってあって、とまったはえが捕まるのです。粘着剤が強いので、うまく引き出さないといけません。
キンチョーの蚊取り線香と同じくらい、生活に密着した製品でした。いつの間にか、私の周囲からは消えました。

9月15日の日経新聞に「カモ井加工紙、欧州や中国にマスキングテープを輸出」で出ていました。今は、工業用や装飾用のマスキングテープを作って、輸出しているとのことです。うまく転換したのですね。

在宅勤務の負の影響

新型コロナウイルス感染症対策のために、在宅勤務が進んでいます。「在宅でも仕事はできる」という意見もあります。それに向いている仕事もあるでしょう。しかし、在宅勤務は、社員と組織の双方に負の影響を及ぼしています。
まず、社員についてです。

社員は、仕事をするためだけに職場に来ているのでしょうか。そうではないでしょう。
同僚や上司、部下との会話が重要であり、楽しみです。仕事に関することでも、画面を通しては聞きにくい、聞くほどのことではないことも多いです。また、仕事以外のことでも、たわいないことから相談事まで、ちょっとしたことを話したいのです。
会社で社員を個室に一人ずつ入れて、「これだけのことをしなさい。わからないことがあったら聞いてください」と仕事の指示をしたら、いじめになるでしょう。在宅勤務は、それに近いのです。

多くの職場で、仕事のやり方は、すべてが記述できるものではありません。引継書と手順書でできる仕事ばかりではありません。
仕事に慣れた経験者なら、仕事で悩んでも切り抜ける方法を身につけているでしょう。しかし、新入社員や人事異動で来たばかりの社員は、誰に相談してよいのか、何を相談してよいのかわからないのです。精神的に不安になっている社員も、多いのではないでしょうか。

この問題は、児童や学生が学校に登校せず、自宅学習する場合にも言えます。子どもも大学生も、教室での勉強以上に、友達とのおしゃべりや遊びが楽しく、それが成長につながるのです。ひとりぽっちでは、さみしくなります。この項続く

若者と政治をつなぐには

9月20日の朝日新聞オピニオン欄記者解説は、秋山訓子・編集委員の「若者と政治、つなぐには」でした。

・・・若者の政治参加が進まない。18歳選挙権は2016年から実現したが、若年層の投票率は低いままだ。
若年層の投票率はほぼ一貫して低い。年代別でみると衆院選は1969年以来、20代の投票率が最低だ。2017年の衆院選では10代の投票率は20代に次いで低かった。
他国と比べても日本の若者の政治への関心は低い。内閣府が18年度に実施した日本を含む7カ国の13~29歳の若者の調査によると、今の自国の政治に「非常に関心がある」「どちらかといえば関心がある」と答えた割合は日本が最低だ。「社会をよりよくするため、私は社会における問題の解決に関与したい」に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた割合も日本が一番低い。
とはいえ、無関心一辺倒でもない。同じ調査で「社会のことは複雑で、私は関与したくない」に、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えたのは、日本は6位。つまり、社会に関心がないわけではなく、潜在力があることをうかがわせる。

日本の若者の政治への関心が低いのは、国内がそれなりに安定していることに加え、国や社会の問題を自分のこととして考え行動することを学ぶ主権者教育が活発でなかったことも理由に挙げられるだろう。
欧米では主権者教育は盛んに行われている。7カ国の調査で政治への関心が最も高いドイツは、ナチス台頭への反省から主権者教育に重点が置かれ、総選挙の候補者による小学生向けの公開討論会が開かれることもある。
スウェーデンでも授業で模擬選挙や地域の政治家を招いた討論会が行われてきた。若者・市民社会庁が出した主権者教育の指南書「政治について話そう!」もある。政治がごく身近で日常のことと扱われている。一方、日本で主権者教育が注目されるようになったのは18歳選挙権の導入時から。しかも高校生が中心だ・・・

記事には、各国比較の図も載っています。わかりやすいです。この問題は、連載「公共を創る」でも取り上げています。
学校では、政治制度は教えられますが、政治の運用は教えません。完成形の民主主義と三権分立を教え、それが議論の末にできたものであることを教えません。手本を輸入する日本型教育の典型です。
正解がないこと、議論の過程が重要なことは、日本の学校教育では避けられるのです。そして今、国政と自治体でどのような政策が議論され、政党が競っているかも教えません。それで突然、選挙権が与えられます。