8月5日の日経新聞経済教室経、経済安全保障の論点、國分俊史・多摩大学教授の「冷戦長期化は有益の視点を」から。
・・・米中冷戦は30年以上続くと聞くと、多くの企業人はけげんな表情を浮かべる。しかし冷戦が長期化する方が、日本および世界にとって有益という考え方に人々は気付いていない。冷戦が実際の戦争(熱戦)にならない状態こそが平和な状況という理解に乏しいのだ。
急激に力の均衡が崩れる方が、戦争リスクは高まる。新しい現実への準備が紛争当事国のみならず、周辺国にもできていない状態で勢力均衡が大きく崩れると、新秩序が台頭するまでに混乱が生じる。これを機に現状変更を仕掛けようとする勢力の動きも活発になる。
冷戦を引き起こさない努力と、起きてしまってからの努力では、力の投じ方が全く違う。米中冷戦が起きないことを願ってきた人々は、起きてしまった状態に早く蓋をして、沈静化したいという思いに駆られて早期決着を望みがちだ。だがそれこそが緊張を急激に高めて最悪の結果を招く・・・