7月7日の朝日新聞夕刊で、奥井智之先生の新著『宗教社会学:神、それは社会である』(東京大学出版会)が取り上げられていました。「宗教的なもの、形変え今も社会に」。この本は、ホームページでも、紹介しました。
・・・社会学者の奥井智之・亜細亜大学教授が5月に出版した『宗教社会学:神、それは社会である』(東京大学出版会)は、社会学の知見から「人間にとって宗教とは何であるのか」に迫った本だ。伝統社会で大きな影響力を持っていた宗教は、近代化と共に衰退してしまったのか。奥井さんは、宗教的なものは形を変えて、いまもスポーツなど様々な分野で人々に受け入れられていると話す。
「近代を通じて、宗教的知識は科学的知識による攻撃にさらされ続けてきました。でも、宗教的なものは今も社会に根を張り続けています。人間はつねに科学的にものを考えるほど単純な存在ではないからです」と奥井さんは話す・・・
・・・「宗教」を表す「religion」は、「固く縛る」「固く結ぶ」が語源で、宗教的な結合は、ほかにも様々な形で生き残っていると奥井さんは言う。
その一つがスポーツだ。「箱根駅伝が年中行事と化しているのは、それを通して新年の幸福を占ったり願ったりする国民的な儀礼になっているからでしょう。近代オリンピックも、賛否はあっても、4年に1回『国民』や『世界』を一つに結びつける宗教的な儀礼ともとれます。スポーツは現代における宗教の代用品とも言えるかもしれません」
さらに奥井さんは、著名な俳優やタレントが亡くなった時、日本中がこぞってその死を悼むのは宗教的な空間が一瞬生まれているからだとみる。
「知人が『科学はエリートのもので、宗教は大衆のもの』といっていましたが、私も同感です。人間の文化の根底には宗教があり、簡単に無くなるものではないのです」・・・