個人の尊重、個人データの保護と利活用

6月2日の朝日新聞オピニオン欄「DX(デジタル化による改革)なんのため?」、曽我部真裕・京都大学教授の発言「利活用で個人の尊重を」から。

・・・民間ではDXが進み、行動履歴までもがデジタル技術で個人データとして記録され、やり取りされています。
なぜ行政のDXだけがこんなに遅れたのか。理由は、個人データの「利活用」よりも「保護」に長らく重きが置かれてきた歴史にあります。
プライバシーという権利は日本国憲法には明記されていませんが、13条が定める「個人の尊重」から導き出されて保護されてきました。データの「利活用」は、情報の漏洩や乱用などは13条で保障されるプライバシー権の侵害になります。さらに、個人のデータがプロファイリングなどのデジタル技術で分析され、意思や選択を操作されることは、「個人の尊重」を脅かすとみなされてきたのです。

しかし、コロナ禍は、行政が個人データを適切に扱えないことが、別な意味で「個人の尊重」という価値を損ねていることをあぶり出しました。この苦い経験を踏まえてこれからの行政は「個人の尊重」を保障するために、データの積極的な利活用に踏み切るべきではないでしょうか。
その際、自分のデータがどこでどのように使われているかを知ることができる透明性の高い仕組みにすることが不可欠です。また、霞が関のシステム改革や民間人材の登用も必要になるでしょう・・・