商売と人権

5月1日の朝日新聞夕刊、佐藤暁子さん(弁護士・国際NGO幹部)の「人権とビジネス、企業のあり方は」から。
・・・中国の新疆ウイグル自治区や香港、ミャンマーなどをめぐる人権状況が問題視されるなか、ビジネスのあり方が注目されている。日本企業はどう向き合うべきか。弁護士で、人権NGOでも活動する佐藤暁子さんに聞いた・・・

・・・中国の新疆ウイグル自治区のウイグル人の強制労働に取引先が関わっているとして、豪州の研究機関ASPIが、日本企業の名前を挙げていた。自治区を離れてウイグル人が働く工場が対象だ。佐藤さんらは、名前が挙がった日本の衣料品や電機メーカーなど14社に聞き取り調査し、結果を公表した。
答えなかった1社を除く全13社が指摘に反論した。それでも「強制労働の事実が明確に否定できない限り、即時に取引関係を断ち切るべきだ」と訴えた・・・
・・・中国当局は「人権弾圧」を否定している。一党独裁の国で「異論」は御法度。経営者の発言しだいで巨大市場から締め出されかねない。逆に、中国を支持すれば中国以外の消費者から批判を浴びる可能性がある。
話すだけ損だと考え、沈黙を続ける日本企業は少なくない。「政治的な質問にはノーコメント」「人権問題というより政治的な問題だ」。正面からの回答を避ける経営者が目立つ。

佐藤さんは批判する。
「全く的外れ。がっかりしました。強制労働は国際的な人権上の問題であって、『政治的』だから何も言わない、という話ではない。説明しないことは特定の民族への人権侵害の現状追認になってしまう」
米国のパタゴニア、欧州のH&Mなどは、サプライチェーン(供給網)において新疆ウイグル自治区から綿花など素材の調達をやめると表明している。「疑わしきは使わず」だ。
「企業は社会の重要な構成員として、力を持つ。材料の調達から生産、販売など一連の過程で人権の尊重を徹底すれば、多くの人権侵害を避け、また救済もできます」
「経営者は、市民社会に対して自らの価値観や哲学を含めて説明責任を果たしてほしい。そうしなければ、世界の投資家や消費者から批判を浴びることにつながるでしょう」・・・
この項続く

ミス、フォロー、クリア

このホームページ定例のカタカナ語批判です。
法案の記載誤り」を書いていて、気づいたのですが。最初は「法案ミス」と書きました。しかし、これだと広すぎると気がつきました。
すなわち、法案に間違いがあるといっても、いろんな場合があります。
・法案の内容に間違いがある場合
・対象条文や引用条文を間違う場合
・日本語がおかしい場合
・改正文(改め文、かいめぶん)が現行法に溶け込まない場合などなど。
「ミス」と言っておけば、全て含まれて間違いないなあ、とも思ったのですが。この言葉が、いかに曖昧かを示しています。

「フォローする」も曖昧です。
「ある案件をフォローする」と言った場合、具体的には何をするのでしょうか。(後をついていって)見守る、(後ろから)支える、(補って)片付ける。どれもありそうです。でも、見守るだけと、片付けるでは意味が違ってきます。
「フォローしておいてね」と部下に指示しておいたのに、その後聞いたら、何も進んでいません。「何もやってないじゃないか」と指摘したら、「ちゃんと見ていましたよ」と返される可能性があります。

「クリア」も、ええ加減な言葉です。
ハードルを跳び越える意味からは、課題や障害を通過することです。サッカーでボールを味方陣内から蹴り返して危機を脱することや、計算器をゼロの状態に戻すことからは、きれいに片付けることです。
書類を置いて「これをクリアしておいてね」と指示したら、課題を解決するのではなく、ゴミ箱に捨てられたとか。

このような言葉は、気をつけないと、ついつい使ってしまいますね。「これでも日本語、NHK」とは違った問題です。

新型コロナウイルス、病床は空いているのに逼迫

5月1日の日経新聞1面「コロナ医療の病巣 機能不全の実相(上)」「空き37万床でも逼迫 非効率 改革先送りの代償」から。
・・・感染者数は欧米より桁違いに少なく、病床数も世界有数の多さを誇る日本が、またも緊急事態宣言に追い込まれた。「病床逼迫」の裏で何が起きているのか・・・

・・・現在と同様に感染者が急増した昨年末、実は全国の一般病床と感染症病床を合わせた約88万9千床のうち約37万2千床(42%)は空いていた。コロナ禍のまっただ中なのに、2019年末より約3万床増え、病床使用率はむしろ低下していた・・・当時、健康観察や治療が必要な感染者は約4万人。それを大きく上回る病床が使われないまま、年明けには2度目の緊急事態宣言に発展した。「ベッドが足りない」と悲鳴があがる一方で、大量の空き病床が発生する矛盾は、日本医療の機能不全を象徴する・・・

記事では、次のようなことが指摘されています。
・急性期病床を名乗りながら、実態は十分な診療体制を整えていない病院があること
・病院間の役割分担や連携が不十分で運用が非効率なこと
・病院内で、専門外の医師を感染症対策に回すように強制できないこと
・医師個人は応召義務があるが、医療機関は事実上診療しないことが正当化されること

そして、救急患者の搬送先が見つからない、たらい回しが起きています。

大型連休終了

5日で、春の大型連休も終わりです。皆さんは、この連休をどのように過ごされましたか。
いくつかの都府県では、外出自粛要請が続き、行楽地や美術館やデパートなどが閉まっています。子どもたちにとっては、つまらない休みだったでしょうね。親も、困っていたでしょう。

近所の薬屋さんが、休みの日に開いていました。店主に聞くと、「することがなくて、開いています」とのこと。
6日からの、学校や出勤を楽しみにしている人も、多いのではないでしょうか。

肝冷斎は、弁当を作って屋外に出かけているようです。私とは違った、人生の楽しみ方を知っています。ある種、うらやましいです。

私は、原稿執筆が少々進み、読書も少々。ただし、思ったほどは進みませんね。本は、読む量より買う方が多く、増えていきます。
このホームページは、飽きることなく、休むことなく書き続けています。1週間振り返ると、結構いろいろなことを書いていますね。
明日以降に掲載する記事も、たくさん準備しました。それで良しとしましょう。

寓話。安値競争を続けると

この20年間、日本では賃金が上がっていません。このホームページでも、新聞記事などを紹介しています。「低い日本の賃金」「日本は貧しい国
次のような、例え話を考えました。

ある島に、10軒の商店がありました。それぞれに10人の社員を雇っています。そこに、安さを売り物に、A社が進出してきました。
A社は機械化と作業の簡素化で、アルバイトでも仕事ができるようにしました。同じ品物が、従来の店より安く買えるようになりました。100人の住民は喜んで、A社の品物を買うようになりました。
売れなくなった10軒の店は、次々と商売を縮小し、社員を解雇しました。解雇された住民は、A社のアルバイトになりました。収入が減るので、安いA社で買い物をすることが増えました。A社は、ますます事業を拡大しました。

で、A社は栄えたか。そのようには、なりませんでした。
その後、売れなくなりました。10軒の商店がつぶれ、100人の住民がみんなアルバイトになりました。貧しくなって、物が買えなくなったのです。
この例え話は、コンビニにも、ファストフード店にも、当てはまります。