連載「公共を創る」第78回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第78回「社会の課題の変化―支援の形態に新たな展開」が、発行されました。

前回から、「人間らしい生き方への被害」について、対策が取られたものを説明しています。雇用の次は、困難を抱えた人たちへの支援です。
これまでは、健康保険や年金などの社会保険制度が最初の安全網(セイフティネット)であり、生活保護制度が最後の安全網と呼ばれていました。それに対し、困窮者支援法や求職者支援制度は、生活保護にいたる前に、自立を支援するものです。第二の安全網と呼ばれています。金銭やサービスの提供ではなく、自立支援は違った手法が必要です。

また、改正社会福祉法では、「地域共生社会」の実現も掲げられています。支え手側と受け手側に分かれるのではなく、地域のあらゆる住民が役割を持ち、支え合いながら、生きがいを持って活躍できる地域コミュニティを目指しています。福祉などの公的サービスだけでなく、住民が協働して助け合いながら暮らす町をつくろうとするものです。
ここに、町や町づくり、地域や地域づくりといった言葉の内容が変化していることを見ることができます。かつては、これらの言葉が指し示す内容は、街並みであり建物や道路の改修が主でした。その後、地域活性化や地域おこしとして、産業や観光の振興、祭りなどの住民活動振興が重点になりました。そしてさらに、住民の助け合い、居場所つくりが課題になってきたのです。

黒江・元防衛次官の壮絶な体験談、その3

このホームページでも紹介した、黒江・元防衛次官の壮絶な体験談、「失敗だらけの役人人生」。第20回、最終回「最後にして最大の失敗」が載りました。
詳しくは本文を読んでいただくとして。官僚が仕事において責任を取るということが、どのようなことかを見せてくれます。

私は、この一件は、釈然としないこともあります。ご本人には、もっといろいろな想いがあると推測します。

「理不尽な進化」説明と理解と納得

理不尽な進化 競争でなく不運で滅びる」の続きです。吉川浩満著「理不尽な進化」は、後半で、自然科学と社会科学の違いを扱います。

自然を説明すること(自然科学)と、歴史を理解すること(歴史学、社会科学)の違いがわかりやすく説明されます。進化論がその中間に位置していること、双方で使われることで、私たちの進化論の誤用が説明されます。
私たちは、自然科学によって事実の因果関係を説明されると、なるほどと思います。しかし、それが私たちにとってどのような意味があるのか、別途、理屈が欲しいのです。社会科学は、それを教えてくれます。自然科学の説明は「因果」「方法」であり、歴史の理解は私たちが求める「意味」「真実」の世界です。次元が違うのです。

さらに言うと、説明されることと、理解することのほかに、納得することがあります。頭で理解できても、気持ちで納得できないことがあります。
地震は地下で岩盤がずれることで発生すると、説明されます。でも、なぜ2011年3月11日に起きたのか。それは理解できません。そして、あの人は亡くなり、私はなぜ助かったのか。説明され、理解できても、納得はできません。
そこに、「意味」を求めるからです。かつて宗教は、それを説明してくれました。自然科学がいくら発達しても説明してくれない「意味」を、私たちはどのように「納得」するのか、自分を「納得」させるのか。難しいことです。

この本は、もっといろいろなことを教えてくれます。面白いです。ただし、文庫本で400ページを越え、文章は平易なのですが、しっかり理解しようとすると読みやすい内容ではありません。著者も狙っているのですが、学術書と小説を混合した文章です。
シーザーがルビコン川を渡ると歴史的事実となり、ほかの何百万の人がルビコン川を渡っても、筆者が神田川を渡っても歴史的事実としては取り上げられない話など、難しい内容に、軽妙な比喩がちりばめられています。でも、納得できます。

本文中にある「注」が、とても充実しています。参考文献がたくさん取り上げられ、どのように読むと良いかが解説されています。哲学から自然科学、そして小説まで、良くこれだけの書物に目を通し、紹介するだけの理解をされたものだと、尊敬します。
私も読もうと思っていた本、興味を引く本がいくつも取り上げられています。でも、これを注文すると、読まない本が増えるのですよね。

政策勉強会「ポリシーガレージ」発足

政策勉強会「ポリシーガレージ」が発足します。
これは、自治体職員の学びと実践の場です。
1 ポリガレは、意欲ある自治体職員や市民とともに、地域の課題についてよりよい政策を作ること、そのような仲間を増やすことを目的としてます。
2 その手法として、ナッジ(そっと押す)などの科学的知見を使います。既にガン検診の受診率を上げるなどの成功例が出ています。
3 この組織に参加することで、月例研究会、オンラインゼミなど参加型の学びとともに、仲間を作るつながりの機会を提供します。

4月25日に、設立記念イベントがあります。有料です。それに先だって21日から、応援者による動画が配信されます。私も、23日夜に登場する予定です。代表者の津田君に、40分にわたり、インターネットを使って取材を受けました。
わが家の書斎で収録したので、背景に(乱雑でお見せしたくない)書棚が写っています。

店員さんとの会話

コロナで外出が減り、店員さんとの会話も少なくなりました。もっとも、大きなお店では、コロナでなくても、会話もなく売買が終わります。会計する際も、後ろに人が並んでいると、時間をかけてはいけませんからね。

近所のスーパーマーケットに、親しい店員さんがおられました。私の素性をご存じで、会計に並ぶと「また、福島に行ってらっしゃったのですか。大変ですね」とか、声をかけてくれました。残念なことに、退職されました。
紀伊國屋新宿本店は大きな本屋さんです。セルフレジ(日本語では何と呼ぶのでしょうか。自分で品物を機械にかざしてお金を払う仕組み)が入って、会計の際に店員さんと会話することも、なくなったのですが。顔見知りの店員さんがおられます。お会いすると、声をかけてくださいます。そして、少しだけ会話をします。

会話があるのと無いのとでは、気分が違いますね。
ご近所のクリーニング屋さんは、必ず会話があります。ところが、先日は話し込んで、コートのポケットを確認するのを忘れました。手袋を入れたまま、出してしまいました。キョーコさん曰く「仕事中に話しかけるのはダメよ。間違うから」。はい、そうでした。手袋は発見され、回収できました。