アトキンソンさん。日本人の検証なしでの思いこみ

2月23日の朝日新聞スポーツ欄、デービッド・アトキンソン氏「世界一寛容な日本、願望に近い」から。

・・・日本人は思い込みや俗説が多い。専門家に確認しない、検証しない。厳しく言えば、プロ意識が低い面があることは共通しています。それは寛容の一環かも知れませんが。
例えば、東京五輪が日本経済の起爆剤になるというのも、俗説。エビを食べて長寿にあやかるのと同じ。数週間のイベントがGDP550兆円の日本経済に大きな影響を与えるはずがありません。
五輪で観光客が増えるというのも、何の根拠もない思い込み。インバウンドが増えたのは5年前からですが、リオデジャネイロで五輪があるからと、開催の5年前にブラジルに行った日本人が多くなった事実はないです。自分たちがやらないのに、なぜ外国人がやると思うのか。
過去の大会では、その年には海外からの需要が増えるが、ほとんどがマスコミ関係。翌年はよくない。2012年に開催したロンドンだけ増えましたが、これは五輪に合わせて観光対策をしたから。五輪だけの影響ではありません。

日本の決定的な問題は、クリティカルシンキング(批判的思考法)が十分にできていないこと。これは、仮説を立てて、ロジックを分解し、データで検証し、結論を導き出すもの。
大学の問題が大きい。クリティカルシンキングができるようになるのは大学生の年齢。人間というものは勝手な思い込みをする生き物なので、それをなくすため大学教育が発達した。
大学の4年間、先生とのやりとりで、思い込みで発言したら、根拠はなんですか? 評価に客観性はありますか?と聞いて答えさせる。日本の大学はそれが十分できていない。
だから日本は事後対応しかできず、いつも後手に回る。事前に仮説をたてて議論しても、受け入れられないのです。予想はできるのに、何も手を打たない。
重ねていいますが、東京五輪はやっても、やらなくても、日本経済には中長期的にはさしたる影響はありません・・・