教師の育成、子どもの貧困を学ぶ

1月28日の読売新聞解説欄、古沢由紀子・編集委員「子供の貧困 教師の卵学ぶ」から。
・・・教員養成大学で、子どもの貧困問題や支援の方策について学ぶ機会を拡充する動きが広がっている。学校現場には、困窮家庭の子どもの状況を早期に把握し、地域や福祉の専門家らと連携する役割が求められるためだ。教師を目指す学生らの意識向上とともに、教科指導に偏りがちな教員養成課程のカリキュラムを実践的な内容に見直す効果も期待される・・・

・・・厚生労働省の国民生活基礎調査によると、18年の子どもの貧困率は13・5%に上り、約7人に1人の子どもが、厚労省が目安とする所得の基準を下回る困窮家庭で暮らす。こうした状況を踏まえ、約8割の学生が教師志望の同大では、子どもの貧困問題について学ぶ授業や研究活動を本格化させている。
オンラインによる小学生の学習支援を主体とした授業は、17~19年度に実施された。同大と連携する都内の自治体で毎年度、希望者を募集。自治体からの就学援助を受けており、学習塾などに通わせる余裕のない家庭の児童らを対象に無償で行った。
時間、距離の制約などから、指導にはネットを活用。当初は子どもが騒いで立ち歩くケースもあり、学生たちは雑談を交えるなど、信頼関係づくりに努めてきた。
中学校の数学科教師を目指す男子学生は「回を重ねるうちに集中して勉強する子が増えてきた。自分は子どもの頃、当たり前のように塾に行っていたが、そうでない子と接するのは貴重な体験。教師を目指す上で、いろいろな見方ができるようになるのではないか」と話した。

学習支援には、スクールソーシャルワーカーなどの専門職を目指す学生らも参加。指導後には毎回、学生同士で意見交換し、報告書を提出する。月1回程度、学生の有志と児童らが対面で交流する場も設けた。
担当した入江優子准教授は「教師志望の学生らが、多様な子どもたちと接する機会は大切だ。大学生には比較的学習機会に恵まれてきた人が多いが、学校現場に出れば様々な困難を抱える子どもがいる実情に触れてほしい」と話す・・・
・・・一般に、教員養成大学の授業は教科の指導法に重点を置き、学力水準が高い付属学校での実習などが「学校現場の実態に合っていない」との指摘もあった・・・

これまでの教育が、「よい子」を育てることに重点を置き、漏れ落ちる子どもを視野に入れていないと、連載「公共を創る」で主張しています。選抜された優秀な子どもを相手に教育実習をしていても、現場では役に立ちません。できる子どもは、極端に言えば「放っておいても」勉強します。手のかかる子どもを、どう指導するのか。それを教えないと、教員養成にはなりません。
職場でも同様です。「よい部下の育て方」だけでは、管理職研修になりません。出来の悪い職員をどう育てるのかが、重要なのです。
平成31年度からの新しい教職課程では、「特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対する理解(1単位以上修得)」が増えています。