「西井・味の素社長。労働時間が増えて売り上げが伸びない」の続きです。
――社長就任後、最もリーダーシップを発揮したのは。
「16年に導入した、完全ジョブ型の人事制度です。人事部長時代にも人事制度改革に挑戦したのですが、経営会議のメンバーに多数決で負けて中途半端な方式になってしまいました。でも、徹底的にダイバーシティーをやるならジョブ型しかない、と信念を持っていました。なので、社長就任から一年もたたずに完全ジョブ型に変更したのです」
「ジョブ型には良い面と悪い面があります。会社組織には、頑張ってようやくそのポストに就いた人や、レールを上がってきた人もいます。でも、ジョブを優先すると人材が若返り、実力主義になります。年功序列じゃないと困るのは上司なんです」
「自分がそうされてきたし、後ろについてきている人もいて、もはや部門の利益の代表になってしまっているからです。企業の古い価値観を変えるには、ジョブ型が絶対に必要だと思います」
――ブラジルでは多様性に戸惑いませんでしたか。
「全くありませんでした。ブラジル味の素は16年に創業60周年でしたが、60年間ずっと日本人が社長を務めていました。でも、全従業員の前でブラジル味の素の経営方針と『3年後にこう向かうぞ』というビジョンを話したのは、私だけだったと聞いています。長い時間をかけてプランを作って、1時間半話しました。会社の向かっていく方向性を示して、権限を委譲して、自分で模範を示す。やはり自分で汗をかかないといけません」