連載「公共を創る」第68回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第68回「日本は大転換期―どうつくるか、新しい時代の通念と道徳」が、発行されました。
前回から、日本社会の通念と道徳が、経済成長を経て変化していることを議論しています。

かつての村の暮らしには、貧しい時代の生活哲学がありました。物を大切にすることや、勤勉であることです。そして、村での教えに、明治以降は新しい意識が乗りました。「みんなで努力して豊かになろう」「欧米をお手本に追い付こう」という考え方です。それを表現した言葉が、向都離村(故郷を離れ、都会で学問や就職をすること)、立身出世(仕事などで成功し、世間に認められること)です。
しかし、この伝統的通念と道徳は、世間の変貌によって変化を余儀なくされます。伝統的な通念と道徳が、現在に必ずしも適合しません。そして、世間で生きていくための知識と判断力を、どこでも教えてもらえなくなりました。

社会の通念によって、個人の信念ができます。他方、近代科学を教えられても、多くの人が程度の差はあれ神や仏を信じています。不運にしろ幸運にしろ、人の力を超えたものを信じたいときや、科学を超えた説明を必要とすることがあります。そして、良い成果が出るようにお願いをし、占いを信じます。人間の力や自然科学を超えた存在を信じるのが、宗教です。