コロナ禍による生活危機の安全網

11月16日の朝日新聞オピニオン欄、清川卓史・編集委員の「コロナ、広がる生活危機 期限切れ迫る支援策、次の一手を」から。

・・・新型コロナウイルスで緊急事態宣言が出た4月から、雇用・生活相談や炊き出しの現場に足を運び、取材を続けてきた。感じるのは、想像以上に広範な層が生活危機に直面しているということだ。
リーマン危機(2008年~)による貧困拡大局面では、工場で働く派遣社員など非正規雇用の男性(現役世代)を中心に、まず問題が顕在化した。「派遣切り」で職と住まいを失った人を支える「年越し派遣村」の取り組みは、広がる貧困を可視化して強い印象を残した。
今回のコロナ禍では、飲食業などの自営業者や正社員、フリーランスの芸術家やインストラクターなど、多様な職種の人々が生活の困窮状態に陥った。女性の雇用が大きなダメージを受けていることも特徴として指摘される。奨学金とアルバイトで生計を立てる大学生から、年金不足で仕事を続ける高齢者まで、年齢層も幅広い。日本で暮らす外国人の深刻な危機も表面化している・・・

・・・ 貧困危機への公的支援をみると、リーマン危機後の数年間は生活保護の利用者が急増した。11年度には、現行制度下で最多だった1951年度を上回る約207万人に。2015年3月(約217万人)にピークに達し、その後は減少傾向が続いていた。
今年4月の生活保護申請は前年同月比24・8%増とはね上がったが、5~8月の申請は前年水準を下回っている。要因として指摘されるのは、生活保護の手前の安全網を国が大幅に拡充し、それを多くの人々が利用していることだ。
柱は、家賃補助にあたる「住居確保給付金」(原則3カ月、最長9カ月)と、社会福祉協議会が窓口になる無利子・保証人不要の特例貸し付けだ・・・
・・・こうした安全網の大胆な拡充が今まで一定の歯止めになってきたことは間違いない。だがコロナ禍の影響で解雇や雇い止め(見込みを含む)にあった人は厚生労働省の集計で7万人を超え、厳しい雇用情勢は続いている・・・一時的な給付金や貸し付けの延長に加えて、追い詰められた人を生活保護につなぐ態勢づくりが求められる・・・

記事についている図「コロナ禍による生活危機の安全網」が、わかりやすいです。