平時、緊急時、変革期で異なるリーダーの役割

11月12日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」は、数原英一郎・三菱鉛筆 会長の「平時・緊急・変革期で臨機応変」でした。
「三菱鉛筆の数原英一郎会長は1987年に社長に就任した。長年トップを続ける中でリーダーの役割は「平時」「緊急時」「変革期」で変化すると考え、状況に応じて使い分けてきたという」

――緊急時と変革期の違いは何でしょうか。
「緊急時は火事のようなもので、今何が起きているのか誰でも分かります。火が出ているのが一目瞭然ですから。社長だったとき、バブル崩壊とリーマン・ショック、そして東日本大震災と3回の危機に直面しました。特に短期間で大きな影響が出たのはリーマン・ショックでした」
「我が社でも物の動きがすっかり止まりました。日本中が慌てたし、我が社も慌てました。そうした危機の時は色々な意見があるかもしれないけど、会社がまとまることが重要だと思います。強いリーダーシップを取る必要がありますね」
「一方で変革期は世の中のパラダイムシフトが起きているけれども、その影響がすぐには分からない状況です。例えばベルリンの壁が崩れたときも、その場ではすぐにどういう影響が出るのか分かりませんでした」
「新しい市場が新興国にできるとか、そうした国が競合になるとか、そういう変化は何年もかけて試行錯誤するうちに、後から分かってくるのです」

――どのようなパラダイムシフトがありましたか。
「3回経験があります。グローバル化と円高、デフレです。バブル崩壊前まではインフレ気味だったのが、デフレに変わって文具の流通も変わりました。国内の文具店は多いときで3万店程度はありましたが、今は4分の1くらいまで減ってしまいました。そのような環境変化に対してどうするか、リーダーが考えて方向性を出すべきです」