11月2日の日経新聞「スマートワーク 新常態の対応、企業の競争力左右」に「求められる働きがい改革」という部分があります。
・・・労働生産性は通常、仕事で生み出される付加価値を労働投入量で割ることで測る。従来の働き方改革でフォーカスされてきたのはこの計算式の分母(労働投入量)をいかに小さくするかだった。日本は長時間労働を美徳とする企業文化があり、給与に占める残業代の比率も高い。このことが先進国で最低の生産性の原因と見なされ、残業時間の削減が働き方改革の「1丁目1番地」となった。
見かけの数字では改革は進捗している・・
・・・アフターコロナでは、生産性の計算式の分子である付加価値により目を向ける必要がありそうだ。経団連も今年1月にまとめた経営労働政策特別委員会(経労委)報告で、これまでの働き方改革が残業時間削減や休暇の取得促進に一定の成果を上げたと総括。その上で働き方改革の「フェーズ2」では付加価値の最大化が課題と指摘した。カギとして位置づけられたのが従業員の「エンゲージメント」の向上だ。
エンゲージメントは2000年代前半に欧州で確立した概念だ。日本では「働きがい」と訳されることが多い。自分の仕事に意義を感じ熱意を持って取り組む姿勢を指す。蘭ユトレヒト大学などがエンゲージメントを定量化する手法を開発するなど、生産性を測る新たな尺度として世界的な注目を集める。人事コンサルのリンクアンドモチベーションの調査では、エンゲージメントが高い企業の方が収益性が高い傾向にある。
日本は諸外国に比べてエンゲージメントの水準が低い。17年の米ギャラップの調査では、「自分の仕事に熱意を持っている」と答えた人の割合は6%と世界平均(15%)の半分だった。米国(33%)やシンガポール(23%)に遠く及ばない。
米国に本部を置く国際的な調査機関、グレート・プレイス・トゥ・ワーク(GPTW)が今年2月に発表した、世界60カ国の7千社を対象に実施した調査でも、日本企業の4割が働きがいは「低下傾向」にあると回答した。働きがいの底上げなくして生産性の向上はおぼつかない。
何が必要か。リクルートマネジメントソリューションズが2月に発表した全国約600人を対象にした調査がある。働きがいを高める制度として上げた人が多かったのは、「社内公募などで配置が実現する仕組み」(44.7%)や「自分の希望に応じて特定のスキルを学べる研修」(49.8%)。柔軟で自由度の高い人事制度が処方箋の一つといえそうだ。
だが現状、日本企業では職務内容に限定がない「メンバーシップ型雇用」が圧倒的な多数派。転勤や異動を拒否することはできず、キャリア形成はもっぱら会社任せだ。コロナを機に職務内容を細かく規定した欧米型の「ジョブ型雇用」を導入する企業も増えているが、働き手の主体的なキャリア形成を後押しする仕組み作りが不可欠だ・・・
このホームページや、拙著「明るい公務員講座 管理職のオキテ」で取り上げている課題です。