小沢晴司さんの回顧

10月27日から、東京新聞で、小沢晴司さんの回顧「ふくしまの10年・地図に残してはいけない仕事」が始まりました。
小沢さんは、記事にあるように、環境省の役人でした。現在は退官して、学者になっておられます。

小沢さんは、元々は自然環境保護が専門です。ところが、原発事故が起きて、放射性物質の除染に携わることになりました。もちろん、世界で初めてのことです。そして、環境省には、そのような土木行政の経験がありませんでした。地元からの厳しい声、手探りの仕事でした。
当初から一緒に仕事をした、同僚です。この連載では、その苦労を聞けると思います。

アメリカ社会の分断

10月23日の朝日新聞オピニオン欄、フランシス・フクヤマさんのインタビュー「米国、分断克服の道は」から。

――それでも多くの国民がトランプ氏を熱烈に支持しているのはなぜでしょう。
「米国政治の変容を理解する必要があります。党派の対立軸が(成長重視の)右か(分配重視の)左か、という経済政策によるものだったのが、21世紀はアイデンティティー(帰属意識)に取って代わられました。自身の尊厳や価値観を認められたいという欲求の受け皿になるかどうかが重視される時代になったのです」
「端的に言えば、共和党は社会で徐々に存在感が薄れゆく白人層の政党。民主党は女性、人種などをめぐる様々なマイノリティー(少数者)、高度専門職に従事する白人が支持層に混在する政党になりました」

 ――その中でトランプ氏が果たした役割は何でしょうか。
「多くの白人労働者層や低学歴の有権者は、トランプ氏を自分たちの価値観や尊厳を大事にしてくれる英雄だと見なすからこそ忠誠を誓うのです。トランプ氏の政治的な本能が、自分たちのアイデンティティーの承認を求める彼らを見事に結集させたと言えます」

――米国は社会の分断を克服できますか。
「大統領が交代すればすぐに分断が解消されるわけではありません。克服には長い時間がかかります。優れたリーダーシップも必要です。バイデン氏でうまくいく確証はありません。まずは地道に『良い統治』に専念することが肝要です。たとえばパンデミックを抑制する策を講じること。『リーダーが問題解決に機能している』と国民が実感できるかどうかが鍵なのです」

 ――分断の根っこにあるアイデンティティーをめぐる対立は続くのではないでしょうか。
「長い目で見れば社会は常に変化しています。たとえばポピュリズムの背景にある白人労働者層の不満には、グローバル化の受益者である大都市に対し、取り残された地方からの怒りの表明という面があります。しかし、地方の縮小を押しとどめるのは現実には難しい。今の対立構図は過渡的といえるかもしれません」

 ――未来に希望をつなぐことはできるでしょうか。
「歴史に後戻りはありません。多くの国々がいま起きている変化に対応しようとしています。なかでも民主主義がレジリエント(強靱)だと私が信じる理由は『抑制と均衡』で過ちを自己修正する機能にあります。米国はこの選挙を通じて、民主主義の強靱さを世界に示してほしいと願っています」

学歴の差が招く分断

10月21日の日経新聞オピニオン欄、小竹 洋之・上級論説委員の「これからの学歴の話をしよう ”知の差別”が招く分断」から。

・・・メリトクラシー(実力社会)。この造語を1958年の自著で世に問うたのは、英社会学者のマイケル・ヤングだ。個人の能力や努力に報いるユートピア(理想郷)の象徴とみなす向きも多いが、当時はエリートが全てを支配するディストピア(暗黒郷)の意味を持たせていた。
ヤングには先見の明があったのかもしれない・・・
・・・サンデル氏は学歴の高低を、欧米の最も深刻な分断軸の一つだと断じる。学位取得の競争条件は決して平等とはいえず、貧富の格差などに影響される。そこで高学歴層と低学歴層の固定化が進み「メリトクラシーが世襲のアリストクラシー(貴族社会)と化してしまった」と説く。とりわけ問題視するのは”知の差別”だ・・・

・・・学位の有無が人の一生を左右するのは確かだ。米連邦準備理事会(FRB)によると、米国の2019年の家計所得(税引き前)は中央値で大卒が9万6千ドル、高卒が4万6千ドル。純資産もそれぞれ30万8千ドル、7万4千ドルと無視できない違いが出る。
誰もが平等な条件で競い、実力で勝ち取った結果なら致し方ないが、そもそもスタートラインが同じではない。米ハーバード大学のラジ・チェティ教授らは子供が米名門大学に入れる確率をはじき、上位1%の富裕層には下位20%の貧困層の77倍のチャンスが開けると結論づけた。
これをメリトクラシーと強弁し、知の差別を容認することができるだろうか・・・

谷公一・衆議院議員のお褒めの言葉

谷公一・衆議院議員のブログ(10月22日)で、紹介してもらいました。谷先生とは、20代の頃、先生が兵庫県庁から自治省に出向されていたときに、一緒に仕事をしました。そして、自民党大震災復興加速化本部事務局長として、ご指導をいただきました。

・・・東日本大震災発災以来、彼ほど霞ヶ関で長く復旧復興に携わった人はいないでしょう。幅広い識見と豊かな人脈、細やかな気配り、そして何より関西人らしく、あくせくしない性格の明るさ、脤やかさ、それでいて憎めない図々しさ。辞めるに惜しい人材です。「全勝のあとには全勝は出(い)でず」でしょう・・・
・・・官僚は2年位(時に1年)で異動するのが当たり前の中で、ほぼ10年、東北の復興に、本当に頑張っていただきました。特に役人が手を付けるのが難しい課題にも逃げずに取り組んでいただきました・・・

周りを見回して立ち位置を決める日本人

10月21日の日経新聞文化欄、三島由紀夫50年後の問い、社会学者・宮台真司さんの「空っぽの日本を何で埋めるのか」から。

・・・日本人は敗戦後、一夜にして民主主義者に変わった。近年では一夜にしてLGBT(性的少数者)主義者に、ダイバーシティ(多様性)主義者になった。日本人は周りを見回して自分のポジションを保ちたがる、空っぽで入れ替え可能な存在だと三島は見抜いていた・・・