広報の家庭教師

9月14日の朝日新聞夕刊「凄腕しごとにん」は、「広報の家庭教師」を自称する、舩木真由美さんでした。「広報担当者を育てた企業、約120社

・・・小所帯のベンチャー企業は、当初は広報担当者がおらず、メディアに情報を伝えるプレスリリース(発表資料)作成や情報提供自体をPR会社に外注することが多い。自身も、かつてPR会社で働いていた。
しかし、そこでたどり着いたのが「広報は、伝言ゲームのようになるよりも、企業理解や商品愛がある社内の人間がやった方がいい」という「自走」の思想だ。そのため、いつまでも黒衣として広報活動自体を手伝うのではなく、約1年で独り立ちできるように「広報の仕方」を伝えている。
広報の仕事と言えば、一般に思い浮かべられるのが、プレスリリースづくりやメディアの記者との関係づくり。でも、それ以上に難しいのが「どのネタをどう打ち出すか」という企画づくりだという・・・

・・・よく伝えるのが「米国の大手IT企業では、新規事業の決裁文書がプレスリリース形式になっている」という話。プレスリリースには、事業概要や立ち上げの背景、ターゲット層などをA4一枚で書くのが一般的だ。企画段階でプレスリリースを書けるか否かで、それが社会で必要とされている事業かどうか見極められ、本当に顧客や社会の求める事業につながると説いている・・・

・・・広報の指南役として社会の課題を知り、情報の目利き力を養うために「インプット」を大事にしている。毎朝、主要各紙をチェックし、ニュース検索のキーワードに「法改正」を登録して社会の変化をつかむ。ツイッターでは多様なアカウントを追いかけ、本を読み、評判の映画を月8本は見る。そうやって培った視点やノウハウも支援先に伝授する・・・

仕事をする上でのコツが、書かれています。広報担当者だけでなく、社員と職員に有用です。全文をお読み下さい。

ゴミ袋有料化の効果

9月13日の朝日新聞オピニオン欄「レジ袋有料化から考える」によると。

・・・適切に処理されなかったプラスチックごみは、世界で年800万トンが海に流れ込んでいると推計されています。プラスチックは自然の中で分解されにくく、海の生き物が誤ってのみこむ、体に絡まるなど、生態系に悪影響を及ぼします。50年には海のプラスチックごみが魚の重量を上回るという試算もあります。
こうした課題について、多くの人に関心を持ってもらうため、白羽の矢が立ったのが、ほかの容器包装に比べて、マイバッグで代替がしやすいレジ袋でした。
国内のプラスチックごみに占めるレジ袋の割合は数%に過ぎません。しかし、そのほかのプラスチック製品も無駄に使い捨てていないか、見直すきっかけにしてもらうのが狙いです・・・

・・・レジ袋有料化は、西友やイオンといった大手スーパーでは2012年ごろから本格的に導入してきました。
一方のコンビニは「ふらっと立ち寄ってもらうのに、マイバッグはそぐわない」といった理由で無料配布を続けてきましたが、大手3社を含む多くのチェーンは、国によって義務化された7月1日から、有料に切り替えました。値段はセブン―イレブンは税抜き3~5円、ファミリーマートとローソンは税込み3円です。

その結果、辞退する客の割合は一気に増えました。有料化前のコンビニ業界は30%に満たない状態でしたが、有料化後はセブンで75%、ファミマで77%、ローソンで75%。おおよそ4人に3人は、レジ袋を買っていません・・・この水準が続けば、ファミマだけで年に23億枚ほどの削減効果があるそうです。
辞退率が上がっている傾向は、新たに有料にしたスーパーや百貨店でも同様のようです。首都圏や関西圏にあるスーパー、ライフの辞退率は48%から76%に急伸。そごう・西武でも飛躍的に伸び、85%に達しています。

性別や年齢別では、どうでしょうか。
レジ情報を分析しているマーケティング会社「トゥルーデータ」が約5千万人の購買データをもとにドラッグストアの7月上旬から中旬にかけての状況を調べたところ、男性より女性の方が、若者よりお年寄りの方が辞退する割合が高い傾向が出ました。男性67%に対し、女性は80%。20代が68%に対し、80代では82%に上りました・・・

空飛ぶ車は東京の空を飛ぶか

空飛ぶ車の開発に、企業がしのぎを削っています。ニュースでも、しばしば取り上げられます。
私は、空飛ぶ車が空を飛ぶことについて、懐疑的です。技術的には、いずれ課題は解決され、実用化されるでしょう。しかし、それが日本の空、東京の空を飛ぶこととは別です。

何が障害になるか。
・少人数で空を移動する手段なら、ヘリコプターがあります。空飛ぶ車と、何が違うか。空飛ぶ車が簡単に操縦できるなら、ヘリコプターもそうなるでしょう。あるいは、ドローン型のヘリコプターができるでしょう。
・ヘリコプターをご存じの方は、あの騒音を知っておられるでしょう。回転翼ドローンも大型になると、うるさいです。私の家の上を飛ぶのはやめて欲しいです。
・自動車が道路を走っても、交通事故が起きます。空の上でどのように衝突を防ぐのか。飛行機の場合は、航空路線が決まっていて、あるいは届け出て許可を得ます。それを考えると、空飛ぶ車も自由勝手に飛ぶことはできないでしょう。衝突回避は技術的にできるでしょうが、通る空路を限定しないと、危ないし、うるさいです。
・自動車も、たまに故障して立ち止まります。空で故障すると、墜落するのでしょう。その安全をどう確保するか。これも、私の家の上空を通ることを拒否する理由です。
・空を飛ぶことに特化しているヘリコプターと、道路を走り空も飛ぶ車と比較すれば、ヘリコプターと自動車を別々に利用する方が、燃料効率は良いでしょう。

どこか広大な砂漠の上を飛ぶ分には、自由に飛んでもらって問題はないでしょう。しかし、町の上、東京の空を飛ぶには、航空道路法規とも言うべき、利用に際する問題解決の決まりを明確にしないとなりません。技術開発とともに、使う決まりを解決しなければなりません。

帝国以後のアメリカのあり方

9月13日の読売新聞、ティモシー・スナイダー、エール大学教授の「帝国以後のアメリカ 「再び偉大な国」幻想と弊害」から。

・・・トランプ氏は4年前の大統領選で「米国を再び偉大な国にする」と公約して当選しました。
私見では、虚構の国民国家への回帰をめざす無理な試みです。
国民国家は「一つの国民」の意識を共有する民族を主体とする統一国家です。米国は18世紀の建国時から「国家に帰属する白人」と「白人の所有する黒人奴隷」という大別して2種類の人間がいた。国民国家とはいえない。トランプ氏の「偉大な国」は白人・キリスト教徒だけで米国が構成された架空の時代を指しているようです。先住民を虐殺した史実も、奴隷を酷使した史実も忘れている。

米国史は帝国史です。北米大陸の東海岸、次に中西部、さらに西海岸へとフロンティアを征服して領土を広げる。帝国の拡張はアラスカとハワイを州として編入する20世紀半ばまで続きます。
米国はその後、東西冷戦で西側・自由主義陣営の盟主として世界秩序を担う。世界の帝国です。

ただトランプ氏が米国第一を唱えて国民国家への移行を試みたことには理由がある。米国は「帝国以後」の段階に入ったからです。
フロンティアを失い、連戦連勝の戦史も今は昔。冷戦後、世界の力関係は変わり、米国は帝国としての使命を見失います。白人らは世界に対する優越感を失い、感情を乱し、戸惑っている。
21世紀の米国の最大の課題は「帝国以後」の国造りなのです。
トランプ氏は白人らの感情の乱れに道筋をつけ、新しい国造りの力に変えることはしなかった。白人がルールを決める偉大な国家という神話を掲げ、結果として国内の有色人種や移民らに対抗させ、国の分断を加速してしまった。
コロナ禍に四苦八苦する米国を見ると、「帝国以後」の針路の過ちを思わざるを得ません・・・