一つの仕事に長く従事する

私の内閣官房参与退任が報道されると、たくさんの人から、ねぎらいの言葉をいただきました。ありがとうございます。その多くに、「長く従事しましたね」が含まれていました。

内閣官房参与は、4年あまり勤めました。東日本大震災対応は発災直後からですから、9年半になります。発災直後から従事している国家公務員は、たぶん私だけでしょう。公務員は、通常2年から3年で異動しますから。
9年の間に、事務局次長、統括官、事務次官、内閣官房参与と職位は変わりましたが、一貫して復興に携わりました。これは、極めて異例だと思います。しかし、ありがたいことでした。

東北復興のように、対象地域が限られている場合は、長期間従事は重要です。被災者はこの9年間、被災者におかれたままです。自治体幹部も、当時のままか、2代目であっても経験者です。その人たちを相手にする際に、「初めまして」より、気心が知れている方が話が早いです。そして、発災直後を知っているかどうかは、その人たちと話をする際に、大きな要素となります。
インフラ復旧などは担当者が交代しても、計画通り工事が進められます。そのようなお金と物でできる行政分野もありますが、行政は人を相手にすることが主です。人間関係が重要なのです。行政の各分野において、公務員はもっと長期間従事すべきです。

他方で、「まだ、難しい課題がたくさん残っているのに、卒業するのか」という、お叱りの声もいただきました。これは、一緒に課題に取り組んでいる関係者の方々からです。地元の方、与党幹部、各省の関係者、マスコミの諸君・・・。福島の皆さんにも、その点は申し訳なく思っています。
「課題を完成させて卒業する」ことが理想ですが、福島からの復興はまだまだ先が長く、私がすべてを見届けることも難しいです。
そこで、私がいなくても、復興が進むように「仕組み」は作り上げてあります。福島特別措置法の改定と延長、復興庁の10年存続、与党提言を始めとする課題解決の手法など。
いくつか、私が抱えている課題については、復興庁顧問として、仕上げるつもりです。いましばらく、お付き合いください。

よい仕事をするために筋肉トレーニング

9月9日の日経新聞、「企業トップ 心身を最高の状態に」から。
企業のトップで、筋肉トレーニングに励む人がいるとのことです。
確かに、悩み事があったり、他のことを考えていると、よい判断ができません。そして、健康でないと、これまたよい仕事や判断はできないでしょう。
「健全な精神は健全な肉体に宿る」という金言も、ありますよね。

ところが、その人たちを指導するトレーナーによると、それだけではないようです。
重要なのは、きついトレーニングで筋肉を大きくすることではなく、「自分がどうありたいか」だそうです。
指導を受ける企業のトップたちは、「自分が筋トレでどうありたいのかというビジョンとそれを伝える言語化力がとても高い。マネジメント力を垣間見ているような気がする」とのことです。

原子力災害伝承館が伝えることと残っていること

朝日新聞ウエッブニュースのアナザーノート、大月規義編集委員の「伝承館に残る故・吉田所長の言葉 そして双葉病院」(9月20日配信)を紹介します。
20日に開館した、東日本大震災・原子力災害伝承館の展示についての解説です。展示を見るだけではわからないことを、解説しています。要点を書き出します。

1 オフサイトセンターが役に立たなかったことと、解体されてしまったこと。
2 原発事故後に避難指示が出た際に、置き去りにされた人たちがいたこと。しかも、病院の入院患者です。また記事には書かれていませんが、避難した人たちも、寝たきりの病人が行き先も決めず、バスで運ばれました。そして、死者が出ました。この運送方法と死者が出たことは、もっと反省されるべきです。
3 吉田所長の責任。記事に書かれていることの他に、NHKの検証では、所長のとった水の注入はほとんど届いていなかったとのことです。
4 経産省のけじめについてです。この記事では、「責任とっていない経産省」と書かれています。

このうち2と4については、このホームページでも取り上げてきました。次回、それを整理して書きましょう。

在宅勤務で問われる管理職の指導力

9月15日の日経新聞「テレワークできてますか(3)」は「受け身の上司はいらない 「在宅」で問われる指導力 進む管理職改革、降格も」でした。
・・・できる上司とできない上司――。テレワークの広がりは、管理職の優劣も浮き彫りにした。リモートでも仕事を適切に割り振った管理職がいる一方、目の前に部下のいない状況に戸惑い業務が滞った人もいた。新型コロナウイルス後をにらんだ管理職改革が広がっている・・・

・・・「自己の役割ランクに応じた具体的な『役割』と『業務内容』を明記し、提出願います」。中堅機械メーカーの中西金属工業(大阪市)は7月中旬、全管理職約150人に通達した。管理職の役割を改めて自己分析してもらう狙いだ・・・まずは日報提出と部署内での共有を義務付けた。
日報を基に上司が部下に適切な助言をできれば。そんな思惑だった。ところがむしろ管理職の課題が明らかになった。例えばある管理職は「午前メール処理、午後資料作成」と書いた。実際に何をしているのか分からない。中西竜雄社長は「2割は部下への指示・助言も不十分で役割を果たしていなかった」と漏らす。
出勤していれば部下の様子は目に入る。誰かしらが相談や報告にやってくるし会議も多い。主体的に動かなくても一日が終わる。受け身の姿勢が染みついた管理職は、テレワーク環境で機能停止していた・・・

・・・内閣府の調査では、テレワークで生産性が落ちたとの回答が約半数を占めた。一因は上司と部下のコミュニケーション不全だ。
アデコが管理職と一般社員を対象に7月実施した調査によると、テレワークで部下とのコミュニケーションが減ったとの回答が約4割に上った。具体的な課題(複数回答)は「チーム間でのコミュニケーション不足」33%、「部下とのコミュニケーション不足」31%、「部下の仕事ぶりが分からない」22%など。部下側も「上司とのコミュニケーション不足」31%、「さぼっていると思われないか」28%など、上司と部下双方の不満がうかがえる・・・

・・・これまでのやり方を見直すのは楽ではない。中西金属工業も、すべての管理職が自分の役割を見いだせてはいない。会社は各自がまとめた「役割」「業務内容」などを基に全管理職と面談中だ。ベテラン社員が指導役になり、業務を「将来につながる仕事」「現状の業務に不可欠な仕事」「なくせる仕事」に分類し、将来につながる仕事の比率を高めるよう促していく・・・

日報と役割シートについて、よい記入例と悪い記入例も、載っています。これは、わかりやすいです。参考にして下さい。

大学は通信教育で成り立つか

これも笑い話なので、まじめに考えないで下さい。先日、大学の教授数人と話をしていました。

全勝:先生のところも、オンライン授業ですか?
教授:そうですよ。すべて、オンラインでやっています。いくつか問題があるけど、やれています。
全:本当にそうでしょうか。私も先生も学生時代に、授業を受けに本郷の教室に行きましたか? 授業では居眠りをして、終わったら友達としゃべるか、麻雀の仲間を探していませんでしたか?
教授:そう言われれば、そうだなあ。
全:でしょ。いまの学生も、その多くは、勉強のために学校に行っているのではないのですから。授業がオンラインでできているといっても、それでは大学の使命を果たしたことになりません。学生は、かなり不満を持っていると思いますよ。

職場も同じで、みんなが、仕事だけをするために、行っているわけではありません。「遅れず、休まず、働かず」という社員もいます。仕事に精を出す人でも、昼の同僚とのランチが楽しみな人も、夜の居酒屋が好きな人もいます。でなければ、女子会や赤提灯があれほどまでに、はやりません。同僚とのおしゃべりのない職場は、つまらないです。