IT企業による全体主義

9月2日の朝日新聞、マルクス・ガブリエル、ドイツボン大学教授の「たな全体主義 精神のワクチンを」から。

・・・いま私たちは、新たな全体主義の危機のただ中にいる。この全体主義は独裁国家による専制ではなく、グーグルやツイッターなどに代表される巨大なテクノロジー企業による支配だ。国家すら翻弄されるデジタル権威主義体制と言えるだろう・・・

・・・私たちは最近まで、とんでもない間違いを信じていたことが明白になったと思います。具体的にいえば、テクノロジーの進歩そのものによって、世界がより良い場所に変わったり、私たちの社会が解放されたりしていく、といった考え方です。
むしろ技術の発展が私たちにもたらしているのは、『新しい全体主義』とでも呼べる状況です。デジタル権威主義体制と言ってもよいでしょう。ただし国家が全体主義的になったという話ではありません・・・

・・・私は全体主義の特徴の一つを、公的な領域と私的な領域の区別の喪失として考えています。20世紀の歴史を振り返れば、日本の過去もそうでしたが、全体主義化すると、国家が私的領域を破壊していった。私的領域とは、より分かりやすく言えば『個人の内心』ですね。国家は監視を通じてそれを探り、統制しようとしました。一方、現代は違います。監視・統制の主体は政府ではなく、グーグルやツイッターなどに代表されるテクノロジー企業です。
私たちはいま、SNSなどで私的な情報を自らオンラインに載せ、テクノロジー企業がその情報に基づいて支配を進めています。しかも自発的に私たちは情報を提供しています。一方、国家はこうした企業に対して規制をしようとしても手をこまねいている。言い換えれば、テクノロジーの発展が、道徳的進歩と切り離されてしまったままなのです。
民主的にも正統化(legitimate)されていない一部のテクノロジー企業が、社会・経済の大部分を左右する。しかも市民自らが自発的に従うことに慣れてしまっている。私がいう『全体主義』はこうした状況です・・・

アルファベット単語、回答

アルファベット単語」の回答です。主に、ウィキペディアを頼りました。

PCR polymerase chain reaction ポリメラーゼ連鎖反応。遺伝子解析に使われる技術。新型コロナウィルスで有名になりました。内容は難しいので、調べて下さい。
PCB Poly Chlorinated Biphenyl ポリ塩化ビフェニル。変圧器などの絶縁体に使われた化学物質。毒性が高く、社会問題を引き起こしました。
BCP Business continuity planning 事業継続計画。災害などが発生したときに、損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を進めるための計画。
TPP Trans-Pacific Partnership Agreement 環太平洋パートナーシップ協定。環太平洋地域の国々による経済の自由化を目的とした、多角的な経済連携協定。

SDG Sustainable Development Goals SDGs 持続可能な開発目標。国連が定めた17からなる目標。
ESG Environmental, Social, and Corporate Governance  環境、社会、企業統治の頭文字。企業の長期的な成長のためにこれらの観点が必要という考え方。
CSR Corporate Social Responsibility 企業の社会的責任。企業が倫理的観点から事業活動を通じて社会に貢献する責任。

GPS Global Positioning System 全地球測位システム。衛星によって地球上の現在位置を測定するための装置。
SNS social networking service 「社会的な繋がりを作り出せるサービス」「インターネット上で人と人のつながりや交流を行う仕組」と解説されていますが、いまいちよくわかりませんね。

身の回りには、もっといろいろ例があるのでしょう。考えてみて下さい。

魚谷雅彦社長の「メンターは求めよ」

8月31日の日経新聞夕刊「あすへの話題」魚谷雅彦・資生堂社長の「メンターは求めよ」。
魚谷社長は、日本コカ・コーラ社長などを務めた、プロ経営者です。その方でも、メンターを持っておられます。経営者として有名な、椎名武雄・元日本IBM会長です。
悩んだときなどに、話を聞いてもらう。そして、背中を押してもらうのです。拙著『明るい公務員講座』で、一人で悩むなとお教えしました。それは、駆け出しの若で社員だけでなく、管理職などより上位の立場になっても同じです。

魚谷社長は、後輩たちに助言を送っておられます。
・・・メンターを得るには能動的に動くべきだ。私に「メンターになって下さい」と言ってくる若者もいる。本気の人は本当に連絡が来て、地方からでも東京まで会いに来る。本気でメンターを求めるなら、講演会などに積極的に足を運び、挙手して質問しあいさつする。たたけよ、さらば開かれん。・・・

アルファベット単語

このホームページ定番の、カタカナ語批判です。
ものごとの略称として、アルファベットの単語が、日本語の文章の中で多用されるようになりました。これって、困るのですよね。その時はわかったような気になるのですが、正確には内容を理解していないことが多いのです。そして、覚えにくいのです。漢字なら想像がつくのですが、アルファベットでは推測もできません。

次の単語は、皆さんも目にしたことがあると思います。何の略称かわかりますか。その意味を、子どもに説明できますか。
PCR
PCB
BCP
TPP

SDG
ESG
CSR

GPS
SNS

回答は次回に

歴史の危機、社会の価値観の転換期

8月31日の読売新聞文化欄、佐伯啓思・京大名誉教授の「歴史の危機 安倍政権の限界」から。

・・・いまから100年ほど前、スペインの文明論者であるオルテガは、その時代を「歴史の危機」と呼んだ。従来の価値観がうまく機能せず、新しい価値観はまだ姿を見せない。そのはざまにあって、人々の信念は動揺し、世の中はせわしなく変動する。
オルテガは、100年、200年単位の長い歴史を展望しているが、10年、20年単位の、いわばその「ミニ版」もありうる。

第2次安倍政権以降の7年8か月はまさに、歴史が動揺する時期であった。冷戦終結以降、当然とされた、グローバリズム、IT革命による経済発展、民主主義の政治、アメリカの覇権は、急速に陰りをみせ、問題を生み出している。中国の覇権主義、トランプ米大統領の就任、欧州連合(EU)での右派台頭は、如実にそれを示している。グローバリズムは富の格差や国家間競争をもたらし、IT革命は情報をめぐる世界的な覇権競争を生み、民主主義は往々にして政治を不安定化させ、アメリカの覇権はリーマン・ショック以来、地に落ちた。かくて、従来の価値観は失効しつつあるが、新たな価値観はまだ見えない。世界史の動乱期である。
こんな状態でかじ取りをする政治的指導者はよほどの覚悟と信念がなければならない。民主主義国の指導者が、世界中で民意や国際情勢に翻弄され続けているのも当然であろう。

しかも日本の場合、それに加えて、東日本大震災からの復興、デフレ経済、中国や北朝鮮からの脅威、人口減少や高齢化などがのしかかっていた。気の遠くなるような話である。安倍首相が政権運営を負託されたのはこのような困難の真っただ中であった・・・

拙稿「公共を創る」も、日本社会について、平成時代、令和時代が日本の転換点であることを議論しています。ただし私の議論は、日本の内なる社会が変わったことです。