田中創著『ローマ史再考 なぜ首都コンスタンチノープルは生まれたのか』(2010年、NHKブックス)を(だいぶ前に)読みました。
本の帯にあるように、古典古代でも、ビザンツでもないローマ世界です。副題にあるように、コンスタンチノープルの誕生からローマ帝国の首都になる過程を描いています。元祖首都であるローマに、取って代わるのです。どのようにして、それが実現するのか。
古代ローマ史といえば、私などはやはり、首都ローマで考えてしまいます。この本は、西ローマ帝国でなく、東と西に分裂する過程、そして東が優位に立つ過程です。
ビザンツ帝国になる前の歴史で、なるほどそうだったんだと、納得しました。
コンスタンチノープルを中心に、そしてそこを首都に仕立て上げた皇帝たちが中心に描かれます。皇帝も絶対君主でなく、推戴されないといけません。その際には、有力者たちの争いに巻き込まれます。皇帝一族に産まれると、幸せになれる場合と、とんでもない運命になる場合があります。
ジョエル・シュミット著『ローマ帝国の衰退』 (2020年、文庫クセジュ)が、書評欄で、訳者の解説が面白いと書いてあったので、読みました。その通り表題に偽りありで、物足りなかったのです。
中央政治の歴史です。人民(と呼べばよいでしょうか)や経済、社会は出てきません。もちろん1000年以上も前のことですから、資料が残っていないという制約もあるのでしょう。歴史学が、政治史から社会史や文化史に範囲を広げているので、そのような分野も期待したいです。