4月29日の朝日新聞オピニオン欄、西野精治・スタンフォード大学教授の「子どもの夜ふかし 家族みんなで見直す機会に」から。
・・・日本の子どもの睡眠時間は年々短くなり、どの統計でも大人の睡眠時間と同様に、世界でワースト1~2位です。欧米では、すでに「危険域」と見なされる範囲です。新型コロナウイルスの感染拡大で休校が続き、外出や運動も制限されています。私の暮らす米国では、家族ぐるみで子どもの生活習慣を整えようとする取り組みがみられますが、日本の子どもたちは、どうでしょうか。
ふだんから日本では、夜の10時、11時に幼児を連れ歩いている親をしばしば見かけます。欧米では見られない光景です。夜ふかしが日常的な家庭環境で育った子どもは、親の生活パターンに引きずられて夜型の生活習慣を身につけて、睡眠不足が常態化しています。それが、負債として蓄積し、体内時計の混乱を招き、睡眠障害の原因にもなります。
発達段階にある子どもの睡眠は、大人以上に大切です・・・人間は、特に脳が未熟な状態で生まれてくるので、新生児は1日合計16時間くらい眠り、睡眠パターンも大人とは違う。脳が活性化する「レム睡眠」が多く、深い眠りの「ノンレム睡眠」が睡眠の時期にかかわらず出現する。脳の発達には、それがとても大切です。睡眠パターンが大人並みになるのは、だいたい12歳ぐらいになってからです。
発達過程の脳では、刺激に応じて神経回路の形成、除去を繰り返し、成熟した脳での最適な情報処理システムをつくり上げていきます。最近の研究により、こういう発育期の脳の形成にとって、睡眠が非常に重要だということがわかってきました。
昼間の眠気が強いと、イライラし、キレやすくなり、授業中にちゃんと席についていられず、先生の言うことを理解できないこともあります。やる気が低下し、倦怠(けんたい)感や身体症状も出て、「慢性疲労症候群」を発症したり、不登校の原因になったりすることもあります。逆に睡眠時無呼吸症候群などの治療をしたら、ADHD(注意欠陥多動性障害)と見られていた症状が改善したという症例も報告されています・・・
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