4月21日の日経新聞「正社員って何だろう(2) 」は、「さらば平等 ソニーの覚悟 新人から給与格差 完全実力主義、逆転も可能」でした。
・・・デジタル革命が世界を揺らす21世紀。正社員のかたちって何だろう。ソニーがたどり着いた答えの一つが「初任給」は横一線でスタートという平等原則の見直しだった。その先には重い課題も待ち受けている・・・
・・・ソニーは昨年入社の新入社員から「新人の給与」は平等という原則を廃止した。能力や働き方が高く評価されると「I1」から「I9」までの等級が付き、階級に応じて給与が上がる。
従来は社員に等級を与えるのは最短でも入社2年目の夏以降だったが、昨年からは新入社員にも適用することにした。その結果、3カ月の見習い期間終了後の「初任給」に格差が出るようになった。松浦さんの「I3」だと月のベース給は5万円増え、賞与なども増額。年収は等級がない同期より100万円ほど多い。
いきなり給与に格差をつけるとやる気が失われるのでは? その心配はない。今後の働きぶりでは等級の降格もあるからだ。
「知識では院卒の同期にかなわないが製品化のアイデアでは負けない」。同じ技術職の大卒女性は早期の等級獲得を目指す。自らの働きで逆転可能な仕組みだからこそライバルも評価し、400人超の同期のやる気も失われない・・・
・・・日本の正社員は終身雇用と年功序列を前提に職務や勤務地を限定せずに働く「メンバーシップ型」が一般的だ。皆が同じ「ムラ社会」に帰属し教育するのも企業なので、初任給も平等であるべきだという考えだ。
一方、初任給に差をつけるソニーの取り組みは、責任や役割に応じて報酬を変える「ジョブ型」を意識する。能力などで個別に新人の給与を決める欧米型に近づけようという試みだ。
初任給見直しに先駆けて12年には採用も変更した。面接でゲーム開発、経理など職種ごとに70コースを提示。学生は第3希望まで選ぶ。人事部だけでなく個々の事業部門幹部も採否に関わる。採用からジョブ型を意識し横並びの初任給もやめる―・・・・
・・・ソニーの場合、等級の降格や剥奪はありうるが解雇に踏み切ることはしない。従来型の雇用関係とバランスをとることで激変を緩和している。経団連も「ジョブ型で採用された社員が特定の職務で能力を発揮できない場合、(解雇するのではなく)別の仕事をやってもらう日本的なジョブ型が望ましい」とする。
焦点は「賃金水準」かもしれない。解雇なしが原則のメンバーシップ型は突然の解雇リスクがない分、給与水準は解雇ありのジョブ型よりも低くなる。初任給を含む賃金で日本が見劣りする一因も、終身雇用を保証しているからだ。だが「薄給」のままで日本企業は高度人材を獲得できるのか。初任給平等原則の見直しは日本型の「正社員のかたちとは何か」を深く問いかけている・・・
わかりやすい図もついています。記事をご覧ください。
参考「働き方innovation 正社員って何だろう(1)」