対立する立場の調整、トリチウム水の処理

先日紹介した、朝日新聞社の月刊誌『ジャーナリズム』2月号に、安東量子・NPO法人福島ダイアログ理事長の「「結果オーライ」への道筋を探る トリチウム水の海洋放出問題」が載っています。
表題だけでは何のことか分かりませんが、政治学として勉強になることが書かれています。詳しくは原文を読んでいただくとして、少しだけ紹介します。

タンクにたまり続けているトリチウム水の扱いについてです。
原子力規制委員会の委員長(現任者と前任者)は、ほかの原発でも規制の範囲内で海洋放出しているので、福島第一原発でも規制の範囲内で海洋放出することが、現実的で唯一の選択肢だと発言しておられます。このままタンクに貯め続けることは、敷地の関係で不可能ですし、タンクに貯めておくことの方が危険でもあります。

他方で、漁業関係者からは、海洋放出によって風評被害が出るので、反対であるとの主張がされています。その際に、「風評被害が出る覚悟はしている。被害を最小限にする方法を考える必要がある」や「科学的な見解は理解できるが、了解はできない」という発言もあります。

安東さんは、概略次のように指摘します。
「希釈して海洋放出するのが現実的で唯一の選択肢だ」という原理原則にとってつけたように、「丁寧な説明を行って正しい情報と知識を理解してもらう」という文言が付け加えられることもあるが、具体的になにをどうするつもりなのか語られることはない。
だが、これはそれほど有効な解決策なのだろうか。政府による丁寧な説明の結果、全員が政府の見解は問題ないと同意してくれるなどということがあり得るのだろうか。あり得そうな話には思えない。なぜならば、それぞれの置かれた状況によって利害が決定的に異なってくるからだ。
この項続く