2月14日の日経新聞経済教室、フランソワ・エラン、コレージュ・ド・フランス教授の「移民問題を考える(上) 「経済利益」偏重の政策 避けよ」に、次のような指摘があります。
・・・日本は明治時代や終戦後などの時期に、外国文化との衝突に伴う深刻なアイデンティティー(主体性)の危機を乗り越えてきた。そのたびに日本文化は生き残った。世界の人々が憧れる日本文化は、文学、伝統芸能、食事作法、技術革新などにより拡散している。日本を訪れる旅行者は、人間関係、居住空間、自然との共生、洗練された文字、文化遺産といった日本文化の魅力に圧倒される。
人口に占める移民割合が10%になったからといって日本文化が脅かされるようなことがあるのだろうか。日本人は、自身の文化は外国人の流入に対して脆弱だと思っているのだろうか・・・フランスで過激化した一部の集団による襲撃事件が発生しても、フランスの社会や文化は揺らぐどころか、かえって頑強になった。ここにパラドックスがある。
硬直的な社会は頑強でなく、閉じた社会は持続的でない。民族的な均一性を守ることは安心感をもたらすかもしれないが、それは長期的には維持できない神話だ。日本文化自体も様々な起源を持つ。日本文化とは、元のそうした多様性に投げ込んだ網の中身であり、あちこちで釣ってきた要素の組み合わせではない。
現在、偉大な国の文化は外国で輝き、音楽や料理は世界を駆け巡っている。人間も同様かもしれない・・・