日本の地政学的グランドデザイン

2月4日の朝日新聞オピニオン欄、出口治明・立命館アジア太平洋大学学長のインタビュー「日米安保改定はや60年」が、簡潔でわかりやすいです。
・・・日米安全保障条約が改定され60年、人間でいえば還暦を迎えた。最初の30年が冷戦下。次の30年は旧ソ連という対抗軸がなくなった一方、経済力軍事力を強化した中国が台頭してきた。さて、これからの30年の見取り図はどうなるか。60年の評価と、押さえておくべき論点は何か・・・

出口さんは、次のように整理します。
1 黒船来航と明治国家
老中阿部正弘が、アヘン戦争などを研究し、彼我の軍事力や経済力の違いを認識していました。そして、開国して、国民国家を作り、富国強兵を断行するというグランドデザインを描きます。維新の後は、大久保利通が、阿部のグランドデザインである開国・富国・強兵を採用して、日本の近代化を進めます。

2 敗戦後
吉田茂が、もう一度、開国・富国・強兵を並べて、考えます。そして、強兵を安保条約でアメリカに代替させて、開国・富国で日本の再建を目指します。

3 これから
安全保障を考える際、自分で防衛力を強化するか、どこかと軍事同盟を結ぶか、基本はこの二つしかありません。同盟相手は、日本より経済力が大きい国でないと無理。すると、アメリカ、中国、ヨーロッパ連合EUしかない。EUは遠すぎる。中国を選ぶという選択肢もありますが、これまでの経緯を考えて、疑問符がつきます。消去法で、日米同盟を大事にしていくしかない。

途中に、戦後の日本とアメリカとの関係を、次のように書いておられます。
・・・戦後の日本は、米国というお父さんのスネをかじり尽くした息子で、鉄鋼、自動車、半導体と米国の主要産業を全部潰して成長してきたようなものです。普通の国だったらボコボコにされるところが、ボコぐらいで米国は済ませてくれました・・・
ご指摘の通りですが、鉄鋼の前に、テレビなど電機製品もあります。その前には、繊維もありました。