孫が知らないこと

5歳の孫と65歳の私とでは、2世代、60年の差があります。5歳の幼子は、好奇心の塊で、次々と新しい知識を吸収しています。いろいろと質問され、世間のことを教えます。
その際に気づきました。孫が幼くてまだ知らないことの他に、孫の世代は知らないことがあります。正確には、体験したことがないことです。

孫と遊んでいると、「そうか、こんなことを知らないのだ」と気づかされます。
1 駅で切符を買う。駅員が、切符に、はさみを入れることを知らない。
2 お店で現金を出し、お釣りをもらう。
3 公衆電話をかける。
4 マッチを擦って、火をつける。ある知人は、孫が訪ねてきたとき、神棚と仏壇に蝋燭と線香を立てたら、孫に「もっとやって」と何度もマッチに火をつけさせられたそうです。
皆さんも、思い当たるでしょ。
現金払いが少なくなり、硬貨や紙幣を見る機会が少なくなりました。貯金箱はどうなるのでしょうか。

2002年に、東大に教えに行ったとき、47歳の私と20歳過ぎの学生や大学院生との「時代の差」に、衝撃を受けたことを思い出します。
昭和30年(1955年)、奈良の田舎生まれで、経済成長以前の日本を知っている私と、その後に生まれた若者との違いです。彼らは、豊かでなかった日本、不便だった日本を知りません。そして、明日が今日より豊かになるという実感も知りません。