働き方改革、霞ヶ関の非常識

日経新聞は、1月28日から31日まで「働き方改革 霞ヶ関の非常識 識者に聞く」を連載しました。

28日の、元厚労省・千正康裕氏の発言から。
――現場の余裕がなくなっている理由は。
「一つは政策立案の速度が速まっていることだ。昔は2年後の国会提出を見越して法案の制度設計をすることができた。今は何か問題が起きたらすぐ法改正などが求められる。児童虐待の件数はここ10年間で増え続けており、児童虐待防止法は4年間で3回も改正された。常に法改正などの案件を抱え、現場も、現場を育成する立場の管理職も余裕がなくなっている」
「人材配置の問題もある。深夜の国会待機が当たり前の働き方では、子育て中の女性らを国会対応が忙しい部局に配置することが難しい。その結果、休まず働けて能力もある一部の職員に次から次へと仕事が集中する状況が続く。今の霞が関ではこうした中核人材が徐々に疲弊し、壊れ始めている。私も企画官になってから休職を経験したが、まさか自分がうつになるとは周りも自分も全く思わなかった」
「第一線で働いていた職員が精神疾患や家庭環境の悪化で厚生労働省を去り、若手も将来のキャリアを描けなくなっている」

29日の、弁護士・菅谷貴子氏の発言から。
――パワハラに耐えて昇進してきた幹部が重要ポストを占めており、組織が変わりにくい側面もあるのでは。
「50代前後の管理職世代は『お気の毒世代』だと思う。かつては仕事一筋の『モーレツ官僚』であることを求められ、管理職になったとたんにワーク・ライフ・バランスを重視する若手の育成や雑用に時間を割かれる。構造的に疲弊しているのは民間企業でも同じだ」
「生ぬるい指導では仕事にならないと思っている人は今も一定数いるだろう。パワハラが横行する職場でたたき上げられ、『あの時代があってこそ地位もスキルも得た』と思い込んでしまう。時代の流れにあわせ、人の育て方を学ぶことも重要なスキルだと伝えたい」