民主主義を支えた中間層の縮小

1月26日の朝日新聞文化欄、「民主主義は限界なのか」、吉田徹・北海道大教授の「絶頂期から30年、衰退の危機」から。

・・・吉田さんによると、歴史上、世界で民主化が進んだのは計3回。19~20世紀初めには市民革命に続いて議会制が整い、20世紀半ばには日本など敗戦国の民主化と旧植民地独立があり、20世紀後半の東西冷戦終結に帰結する動きが3回目だ・・・

・・・絶頂期からわずか30年で民主主義はなぜ揺らいでいるのか。吉田さんが指摘する先進国における最大の理由は、中間層の縮小だ。
「戦後の先進国の民主主義が安定していたのは、原理原則が支持されたからではない。全体主義や共産主義と競争する中で中間層を守り育てる形で労働者への再分配、福祉国家化を進めることで、実質的な平等が実現したから。ところがいま、中間層が縮小し、解体の憂き目にあっている」

中間層の減退が始まったのは、国家による再分配の役割を減らした新自由主義的政策を掲げる指導者が登場した1980年代以降のことだ。その後、経済のグローバル化が進み、国際競争が激化するなかで08年には金融危機が起きた。再分配は低下して不平等化が進み、福祉国家を維持することも困難になり、中間層の縮小は加速した・・・

人生100年時代の現実

1月24日の朝日新聞オピニオン欄、「人生100年の現実」。医師の富家孝さんが、次のように話しておられます。

・・・ずっと元気でいて、あまり苦しまずに亡くなる「ピンピンコロリ」が理想ですが、残念ながらめったにいません。病気やけがにより不自由になった体で生きる期間が平均して男性で9年、女性で12年ほどあるのが実情です。
感染症などで若死にする人が減り、寿命が延びても、がんなど加齢が大きな原因となる病気が残りました。がんの先には認知症が待ち構えており、80代後半で約4割、90歳だと約6割が発症します・・・

・・・議論が進まない責任はメディアにもあります。長生きというと元気な人ばかり登場させますが、長寿は良いことばかりではないと伝えるべきです・・・

フランスの経済エリート

小熊英二著『日本社会のしくみ』で引用されていたので、葉山滉著『フランスの経済エリート カードル階層の雇用システム』(2008年、日本評論社)を、斜め読みしました。
官僚の社会的地位が高く、また主導的機能を果たしている国として、フランスには興味を持っていました。この本は、産業界の官僚ともいうべき、企業のカードルについて書かれたものです。カードルは、企業だけでなく官庁を含め、管理職や高度専門職に就いている人たちです。

一般的に西欧では(実体的には日本でも)、職業は次のように分類されます。
まず、自営業者と雇用者に大別されます。自営業者の中は、農業経営者と、企業主・商人・職人とに二分されます。雇用者の中は、管理職・高度専門職、中間的職業、職員、工員の4つに分けられます。

この「管理職・高度専門職」がカードルです。この言葉は、元は「枠」という意味のフランス語で、1870年代の軍隊から用いられたようです。士官学校出身の将校(士官)たちです。彼らが戦略を練ります。その方針を実践に移すべく現場で指揮を執るのが、下士官です。その指揮の下で、実践するのが兵です。
管理職・中間管理職・職員という三層構造は、たいがいの組織で当てはまります。

関心ある方は、本を読んでいただくとして。あらためて、次のようなことを考えました。
・働き方や雇用慣行は、その国の社会のかたちや個人の生き方を規定する。
・そして、教育の仕組みもそれと連動すること。フランスのエリート教育は有名です。
続きは、別途書きます

この本を探したら、杉並区の図書館にありました。このような専門的な本も所蔵しているとは、たいしたものです。図書館の蔵書は、インターネットで簡単に検索できて、近くの分館まで届けてくれます。通読しようとしましたが、他に読まなければならない本がたくさんあるので、断念。また必要がでたら、借りましょう。
アマゾンで探したら、中古はとんでもない値段がついていました。

栃木県庁で講演

今日1月27日は、栃木県庁で管理職研修の講師を務めてきました。題は、働き方改革です。
いまや、日本社会の重要課題になりました。しかし、日本の雇用慣行と労働慣行は、この国のかたちの結節点です。仕事の仕方、職員の評価から始まり、帰宅後の居場所作り、教育のかたちなども変える必要があります。
日本人にしみこんだ働き方は、そう簡単に変えることができるものではありません。私の講演を聴いただけで、変わるようなものではありません。

とはいえ、皆さん方の刺激になるような話をしてきました。昭和の仕事人間が、どのようにして、残業嫌い人間に変身したかです。140人を超える管理職の方が、メモを取りながら、聞いてくださいました。
きょうお話しできなかった、仕事の能率を上げるコツは、「明るい公務員講座」シリーズを読んでもらうこととして、拙著を寄贈してきました。

補足です。参考になる記事などを紹介しているのは、「明るい課長講座」と「生き方」のページです。

原発被災地、営農再開状況

福島相双復興推進機構(官民合同チーム)が、被災農業者の営農再開支援として、個別訪問をしています。令和元年12月での概要を公表しました。

1,774 の農業者に対し、延べ4,755 件の訪問をしています。
再開済の農業者は 518 者(29%)、今後再開意向の農業者は 247 者(14%)で、合計で 765 者(43%)です。再開意向のない農業者は 766 者(43%)、再開未定の農業者は 243 者(14%)でした。

大まかにいって、半数近くの人が、再開意向があります。他方、半数の方は、再開意向がありません。
すると対策は、
・営農意向のある方に、再開の支援をすること
・営農再開意向のない方には、同意があればその田畑を貸してもらって、他の人による大規模営農につなげることでしょう。