1月26日の朝日新聞文化欄、「民主主義は限界なのか」、吉田徹・北海道大教授の「絶頂期から30年、衰退の危機」から。
・・・吉田さんによると、歴史上、世界で民主化が進んだのは計3回。19~20世紀初めには市民革命に続いて議会制が整い、20世紀半ばには日本など敗戦国の民主化と旧植民地独立があり、20世紀後半の東西冷戦終結に帰結する動きが3回目だ・・・
・・・絶頂期からわずか30年で民主主義はなぜ揺らいでいるのか。吉田さんが指摘する先進国における最大の理由は、中間層の縮小だ。
「戦後の先進国の民主主義が安定していたのは、原理原則が支持されたからではない。全体主義や共産主義と競争する中で中間層を守り育てる形で労働者への再分配、福祉国家化を進めることで、実質的な平等が実現したから。ところがいま、中間層が縮小し、解体の憂き目にあっている」
中間層の減退が始まったのは、国家による再分配の役割を減らした新自由主義的政策を掲げる指導者が登場した1980年代以降のことだ。その後、経済のグローバル化が進み、国際競争が激化するなかで08年には金融危機が起きた。再分配は低下して不平等化が進み、福祉国家を維持することも困難になり、中間層の縮小は加速した・・・