ルフェーブル著「1789年―フランス革命序論」(1998年、岩波文庫)を読みました。いつか読みたいと本棚で寝ていたのですが、突然読みたくなって。
フランス革命など著名な歴史的事件については、知っているようで知らないですね。かつて読んだことは、忘れていますし。
この本は事件の経過を書いたものではなく、1789年の出来事を4つの時間、4つの意味に分けて説明します。
1つめは、アリストクラート(貴族と高位聖職者)の革命です。王権に対して、自らの地位を高めるべく挑戦します。三部会の開催は、ここから始まりました。
しかし、三部会を開くとなると、アリストクラートの意向だけでなく、ブルジョワジーが発言力を高めます。第2期は、ブルジョワジーの革命に移行します。
ところが、彼らが時間をかけて議論していることに対し、民衆がしびれを切らして行動に移します。元は、パンの値段が高くなったことです。不満は、バスティーユ監獄襲撃になります。もっとも、知られているように、バスティーユ監獄にはそれだけの政治的意味のある囚人はとらわれていなかったのですが。こうして、意図せず、第3期の民衆の革命に移行します。
さらに、地方での民衆の動きに波及し、第4期の農民の革命にまで広まります。
シナリオなき歴史の展開は、読む人を引き込みます。
このように、どのような主体がそれぞれの意図に沿って動き、それが結果としてどのような意味をもったかを説明します。議会の中での議論が革命を進めたのではないことがよくわかります。それまで書物と違い、民衆までを含めた点に、この本のもつ意義があったようです。
こうして、半年の間に、誰もが予想しない展開になってしまいます。後知恵ですが、先を見越して途中で、王や貴族たちが妥協しておれば、ここまで進むことはなかったでしょう。しかし、事前に識者たちが考えていた「自由や平等を実現する政治形態」を超えて、王政廃止に進むのです。
そして、この本で書かれた1789年の後には、王やたくさんの政治指導やたちの処刑が続きます。いったん動き出した革命は、さらにとんでもない混乱になってしまいます。
ルフェーブルがこの本を書いたのは、1939年。フランス革命150周年記念としてです。フランスは、第2次世界大戦直前です。学術的論文と言うより、国民への啓蒙のため、迫り来る危機の前で、フランス革命が目指した自由と平等を再確認したいという意図があったようです。
訳文も読みやすいです。もっと早く読んでおくべきでした。