家族の形の多様性

セサミストリートって、ご存じですよね。かつて、NHKでも放送されていました。6月8日の朝日新聞1面に「ひらけ、セサミの多様性 TVの枠超え、学校教育に 番組50年」という記事が載っていました。

ここで紹介したいのは、多様な子供たちが出てくることです。
自閉症、親が離婚・再婚し義理の兄弟がいる子供、父が戦地で負傷し車いす生活になる子、ホームレスの子、生まれたときからHIVに感染している子・・・アメリカ社会の現実を反映しているようです。

理想的な人生や家族を教えることも重要ですが、みんながそうなるわけではありません。現実を教え、その際の対処方法も教えるべきです。

マクロの産業政策とミクロの事業者支援の違い

6月10日に開かれた、福島相双復興推進機構(官民合同チーム)の成果報告会に行ってきました。400人の参加者で満員でした。企業コンサルタントの方などが多いようです。
相双機構は、原発被災地の事業者を戸別に訪問し、事業再開支援を行っています。これまで約5,300の事業者を訪問し、支援しています。「再開事例の紹介

ところで、産業支援には、大きな計画をつくり、補助金や減税などの施策によって対象になる事業者を支援する方法と、このように個別事業者ごとに相談に乗る方法があります。前者がマクロ政策で、後者がミクロ政策と言ってよいでしょうか。
これまでの行政の支援は、前者が主だったようです。マクロ政策は、霞ヶ関で立案でき、方法は方向の明示とお金による支援です。それに対し、ミクロ支援は、お金の支援もありますが、相談業務が主になります。現場に行って、一つ一つの事業者の相手をしなければなりません。手間がかかります。中には、帳簿もうまくつけられない家族経営の店もあります。そこから、支援しなければなりません。

ここに、産業政策の変化、新しい形が見えると思います。
新しい産業や元気な企業を育てるには、マクロ政策で可能でしょう。そのような事業者は、自ら応募し、それらの施策を活用します。
他方で、自分ではそのような施策に応募できないような、零細な企業や、困っている事業者は、マクロ政策では支援できません。個別に、相談に入る必要があります。そしてたぶん、そのような事業者は、自らの経営のどこが悪いのか理解していないと思います。復興庁が行っている「結の場」もそうです。

これまでは、元気な事業者を育てることに重点を置いていました。しかし、弱い事業者支援も重要です。これは、日本の行政一般に言えることです。民間や国民に対して「先導者」となることと、ついて行けない企業や国民の「安全網」になることとです。
その際に、元気な者を育てる場合と、それができない弱い者の支援をする場合とは、手法が異なるのです。

生産性の劇的向上はもう起こり得ない

6月6日の朝日新聞オピニオン欄、経済学者のロバート・ゴードンさん「低成長時代を生きる」でした。
「画期的発明による生産性の劇的向上はもう起こり得ない」
・・・人工知能(AI)に自動運転、5G。世はイノベーションの話題で満ちているのに、いま一つ経済に元気がない。「長期停滞論」の火付け役の一人、米国の経済学者ロバート・ゴードンさんは「もはや輝かしい過去の再現はあり得ない」という。私たちはもう「低成長」という長いトンネルから抜け出すことはできないのか・・・

「私は1870年からの100年間を、『特別な世紀』と呼んでいます。電気やエンジンといった偉大な発明のおかげで、生活水準と生産性が劇的に上がりました。かつて大半の人々は農村に住み、男性は死ぬまで過酷な労働に耐え、女性は朝から晩まで家事に縛られていました。それが第2次産業革命の数十年で、都市での快適な暮らしへと移ったのです。これは人類史において一度限りの出来事で、匹敵する変化を再現することはもうできません」
「エジソンが電灯を発明したのは1879年ですが、第2次世界大戦前には米都市部のほぼ全世帯に電気が届きます。製造業の動力も蒸気機関から電気に代わり、経済の効率が劇的に上がりました。電灯とほぼ同時期に発明されたエンジンが、自動車や航空機を動かすようにもなりました。こうした発明を土台に、1970年までの半世紀は、毎年ほぼ3%のペースで生産性が伸び続けました」

――70年代に低成長に陥ったのは石油危機がきっかけでは。
「ちょうどそのころ、偉大な発明の効果がほぼ出尽くしたのです。米国ではエアコンが行き渡り、蒸し暑い南部でも快適に仕事ができるようになりました。高速道路網が整い、飛行機もプロペラ機からジェット機に代わった。以来、これら偉大な発明に匹敵する革新は生まれていません。この構図はどの先進国も同じです」
――その後も「第3次産業革命」が起きたはずです。
「デジタル革命ですね。メインフレームと呼ばれる大型コンピューターに始まり、80年代にパソコンが台頭。タイプライターも書類棚も不要になりました。みんながインターネットにつながる時代を90年代に迎え、ここで少し生産性が持ち直しました。しかし、その効果も2005年までにはピークを過ぎました。『特別な世紀』が70年代で終わったように」
――アップルのiPhone(アイフォーン)が登場したのは07年ですが。
「スマートフォンは素晴らしい発明で、消費者の暮らしを便利にしたのは疑いありません。しかし、恩恵は娯楽や通信といった分野が中心です。電気やエンジンほどには、幅広いビジネスの本質を変えたり、生産性を高めたりはしていません。むしろパソコンの発明の方が根本的な革新でした」

参考「例外時代

発掘された日本列島2019、続き

昨日書いた「発掘された日本列島2019」で、大切なことを忘れていました。
本展示のほかに、特集の棚があります。その1が、「福島の復旧・復興と埋蔵文化財」です。
南相馬市、浪江町、双葉町、大熊町、富岡町、楢葉町、広野町での発掘調査結果が展示されています。

津波被災地では、高台移転のための予定地で、緊急発掘調査をしました。早く調査を終えて、住宅建設をするために、全国から調査員に応援に入ってもらいました。
発掘された日本列島展では、それらの調査成果も展示されました。参考「発掘された日本列島展2015

保守勢力としての労働組合

6月1日の日経新聞オピニオン欄、藤井一明・経済部長の「フリーランスが崩す岩盤 働き方改革、複眼的に」から。
・・・平成が幕を下ろすのを待ち構えていたかのように、JR東日本の労働組合から組合員が大量に流出している。2018年2月に約4万6千人いた最大労組の組合員数は改元を間近に控えた19年4月で約1万1千人にまで落ち込んだ。ほかの労組も含め、加入している人の割合を示す組織率はかつての9割から3割に急落した・・・

記事には、労働組合の組織率の各国比較もついています。スウェーデンの67%を例外として、イギリス24%、日本17%、ドイツ17%、アメリカ10%、フランス8%です。
半世紀前と、全く様変わりしました。労働者の待遇がよくなり、労組に加入する利点が見えません。また、政治的には共産主義・東側に近かったのですが、冷戦の終結でその意義もなくなりました。

記事では、他方でフリーランスが増えていることを取り上げています。ここでは、それに関して、労組の問題を取り上げましょう。フリーランスのほかに、非正規社員もいます。この人たちは、既存労組に入っていません。
かつて労働組合は、「市民との連帯」というスローガンを掲げていました。しかし、その人たちとの連帯を進めることなく、正規職員の利益を守ったようです。ここに、労組が革新勢力ではないことが見えてしまったのです。