5月18日の日経新聞オピニオン欄、丸谷浩史・政治部長の「外国モデルなき令和の政治 ポピュリズム防ぐには」
・・・安倍政権では首相と菅義偉官房長官が「移民ではない」と確認したうえで、外国人労働者の受け入れ拡大をあっさりと実現した。賃金も政府主導で引き上げている。これが外国からは「リベラルな中道政権」に映る。
主義や理念の定義はさまざまだろうが、いわゆる保守と中道・リベラルが違和感なく共存する空間が、首相官邸と自民党にはある。平成の2度にわたる政権交代があわせて4年ほどで終わった理由のひとつも、ここにある。「非自民政権」とは、自民党でないことがアイデンティティーとなる。自民党は昭和30年以来の長きにわたって政権党の座にあり、その政治手法は日本社会そのものに組み込まれている部分もあった。
「自由民主党」を全否定すると、政権運営のモデルは外国に求めざるを得ない。2009年の民主党政権は、それを英国に見いだし、政府と与党の一元化を一気に進めようとしたこともあって、つまずいた。政権奪還をはたした自民党は、民主党の失敗を教訓に、首相官邸主導や与党優位に働く小選挙区制の政治システムを、20年かけて完成形に導いたといえる。
制度は完成したと思った瞬間に綻びが生じる。強すぎる官邸がブラックボックス化し、政官関係にゆがみが生じるなどの指摘も出てきた。では、新たな改革モデルをどこに求めるのか。
幕藩体制から近代に脱却する時から、日本の政治はドイツや米国など外国の制度を参考にしてきた。平成の政治改革でモデルとなってきた英国の二大政党制は、ブレグジット(欧州連合からの英国離脱)で機能不全をさらけ出した。最近の世論調査では、支持率トップに「ブレグジット党」(Brexit Party)が躍り出た。「保守」「労働」のように理念を表す党名ではない。単一の政策争点だけを掲げるシングル・イシュー政党だ。
欧州でも政党地図は激変している。共通するのは極右やポピュリズム(大衆迎合主義)政党が伸長している事実だ。既存の政治勢力が改革を怠り、民意が離れれば、ポピュリズムが台頭してくるのは、戦前の日本も含めて歴史の教えるところでもある・・・