外国人旅行者を呼び込むために

5月3日の日経新聞オピニオン欄、デービッド・アトキンソン(小西美術工芸社社長)の「貧弱な観光インフラでは稼げない」から。

・・・2018年は甚大な自然災害があったにもかかわらず、訪日外国人数は前年比8.7%増の3119万人となり、12年の836万人から大きく増えた。政府は20年に4000万人を誘致する目標を設定しているが、19年にラグビーワールドカップ、20年に東京五輪・パラリンピックがあるから、かなり現実的だろう。
それより重要なのは、17年の日本の観光収入が世界10位になったことだ。念願のトップテン入りで、18年は9位に上がっている可能性も高い。たった5年間でのトップテン入りは今まで世界的に例のないことだ。日本の観光立国の潜在能力の高さとこれまでの国などの実行能力、観光地の努力と評価してもいい。
だが、課題は当然ある・・・

・・・訪日外国人は日本人の何倍もの時間とお金を使って旅をするので、観光地と観光資源が整備されていないのは好まない。多言語対応、公衆Wi-Fi、トイレ、アクティビティー、文化財の解説案内板、博物館の解説、宿泊施設など、ハード、ソフト両面の整備が最大のポイントだ。
タイに112軒、バリ島だけで42軒の5つ星ホテルがあるのに、日本はたった32軒しかない。富裕層戦略を実行すると言っても成功しないに決まっている。それが十分理解されていないと感じる・・・
・・・全国の観光地経営組織(DMO)と都道府県の予算は1000億円を超えている。しかし、約7割は誰も読まないホームページ、ローマ字で書かれているがネーティブがチェックしていない謎の文章、瞬間的に消えてしまうSNS、誰にも届かない動画、自己満足的な海外トップセールスなどに使われていることが何より悲しい。整備されていない観光地をどんなにアピールしても、来た人は満足できず、口コミは良くならない・・・

そうなんですよね。5つ星のホテルは、あなたの地元にありますか?
4月30日の日経新聞「私見卓見」、松本百加里・リクルートライフスタイル じゃらんリサーチセンター研究員の「海外旅行の醍醐味はどこ」も参考になります。

・・・今年のゴールデンウイークは10連休となり旅行に出掛ける人も多いだろう。海外旅行に何を求めるかは国によってだいぶ違う。当社の「じゃらん海外旅行ニーズ調査」で見つけた面白い違いを紹介したい。
日本人は海外で「おいしいものを食べたい」と答える人が多い。米国人のトップ2は「冒険心を満たしたい」と「異文化の世界を味わいたい」・・・英国人は「パートナーと充実した時間を過ごしたい」「家族をもてなしたい」と答える人が多く、旅行を同行者と関係を深める手段と考えているようだ・・・中国人は「歴史や文化を知りたい」「友達と盛り上がりたい」と答えた人が他国より多かった。あとで人に自慢できるような壮大な景色や文化に触れたいのだろう・・・
・・訪日外国人が増える中、目の前の誘客ばかりに気を取られ、相手のニーズを理解しないと、国内でお金を使ってもらえない・・・