書評で見かけて、佐藤賢一著『ダルタニャンの生涯 史実の『三銃士』』(2002年、岩波新書)を読みました。
アレクサンドル・デュマの『ダルタニャン物語』は、子供の頃(児童書)で読みました。わくわくしましたよね。ところが、佐藤さんの本を読んでいただくとわかるのですが、ダルタニャンは実在の人物なのです。もちろん、小説は実物を基にしつつ、脚色してあるようです。さらに、デュマの小説には種本があって、その「ダルタニャン氏の覚え書」は本人の回想録の形を取った創作なのです。ややこしい。
ガスコーニュ地方(フランス南西部のピレネ近く)出身の若者が、郷土の先輩を頼って、パリに登り、王の親衛隊として出世します。
まさに、「出仕、陰謀、栄達、確執・・・小説よりも奇なる、人生という冒険に挑んだ男の足跡」が生き生きと描かれています。私生活もわかるのです。
ルイ14世の時代、金とコネで官職が手に入ります。当時の社会もわかります。
ところで、佐藤さんがこれを執筆されたには、元になった本や資料があると思うのですが。本書は、それについては一切触れていません。新書という体裁だからでしょうか。「直木賞作家初のノンフィクション」とあるのですが、この本も「史実」と名乗りながら、創作なのではないかと、疑ってしまいます。それも、佐藤さんの計算なのかもしれません(苦笑、失礼)。