できあがったものか、つくるものか3

できあがったものか、つくるものか2」の続きです。
この項を書き始めた趣旨は、実は「日常の行動が、思考を制約する」ということでした。 社会学では、カール・マンハイムの「存在被拘束性」ですね。科学史では、トーマス・クーンの「パラダイム」にも通じます。

解釈法学を学んでいると、また、できあがった政治の分析を学んでいると、現在の制度や社会を固定したものと見るようになりがちなのです。歴史学は過去を分析しますが、社会科学系の学問一般に、未来の制作より過去の分析に重点が置かれます。

歴史学が過去との対話であるのに対して、官僚は現在と未来の国民に責任を持つために「未来との対話」が必要だと、日経新聞コラムにも書きました。
公務員・行政組織は、社会の新しい事態に対応することが任務の一つです。しかし、解釈法学の世界に住んでいると、そして制度はできあがったものだと考えていると、この制約にはまり込みます。すなわち、現在の仕事が、あるいは仕事のやり方が正しいと思ってしまいます。そのやり方を変えるという視点を持たなくなるのです。

インフラ整備・公共事業も、気をつけないと、造ることが目的になってしまいます。
例えば、公営住宅です。かつては、不足する住宅を補うために、戸数を整備することが任務でした。今は、住宅は戸数だけ見ると余っていて、空き家が問題になっています。他方で、公営住宅での孤立、孤独死が問題になっています。
すると、建設ではなく、入居者への支援が大きな課題になります。土木部ではなく、民生部の仕事になるのです。
「住宅を作る」ではなく、「住宅で何が問題か」という発想が必要になります。過去の延長ではなく、現在の課題と未来への対応という思考が必要なのです。

2000年に介護保険制度を導入したのは、良いことでした。増える高齢者・介護対象者を見越して、この制度をつくりました。多くの人が助かっています。
定住外国人の受け入れも、それに当たります。これまで受け入れた経験で、地域での共存、子弟の教育などが課題とわかっています。今後、大勢の外国人労働者を受け入れるので、その準備が必要です。
これらは、既存制度の少々の手直しでは対応できない、大きな社会の変化です。

四角な座敷を丸く掃く」で、四角な仕事の外(大きな丸)を考える必要性を述べました。座敷の中に閉じこもっていたり、砦の中だけを深掘りしていてはいけません。

宮城県市町村行財政セミナー

きょう2月15日は、宮城県市町村行財政セミナーに呼ばれて、講演に行ってきました。170人の方が聞いてくださいました。

第1部は小西砂千夫・関西学院大教授で、第2部が私です。東北で、二人で関西弁でしゃべってきました。まあ。村井・宮城県知事も大阪出身だし、アイリスオーヤマの大山健太郎会長も大阪出身ですよね。
「G7の中で日本がゲベです。おっと、ゲベってわかりますか」と聞いたら、「わかりません」といわれました。最下位、ビリのことです。

東北の方はまじめなので、それなりに手を打ちました。笑って欲しいところは、「ここは笑ってください」と強要しました(笑い)。
何度も講演はしているのですが、観客と波長が合う会と、あわない会があるのです。きょうは良かったかな?
話し方は関西弁、笑いも取りましたが、内容は、もちろん重要なことですよ。

原発被災地営農再開支援

福島相双復興推進機構(福島相双復興官民合同チーム)では、商工業者だけでなく、農業者の帰還支援もしています。避難指示が出た12市町村の農業者への戸別訪問をしています。平成30年12月時点での結果が、公表されています。

それによると、訪問した1,429者のうち、再開済みは352(25%)、今後再開意向は216(15%)でした。4割の方が再開または再開意向です。他方で再開意向のない人は646(45%)おられます。
支援した事例が、写真付きで載っています。ご覧ください。

バレンタインデー

男性諸君、きょうはバレンタインデーでした。いくつ、チョコレートをもらいましたか。

もらったチョコの数を競うことや、多くの義理チョコと一つの本命チョコを比較するのは、意味がありませんが。最近は、「義理チョコ」とも呼ばないそうです。
少ないよりは、多い方がいいですよね。
若い時は、たくさん集めるのに精を出したものです。今から思うと、アホなことをしていました。

くださった女性諸君に、ありがとうございました。
でも、贈る側の女性にとっては、出費の日ですね。申し訳ありません。

講談社学術文庫、オンデマンド

最近は、文庫本や新書版しか読まないと書きました。「アンリ・ピレンヌ著『中世都市』
新書は新しい動きを見る際に、役立ちます。先日紹介した「サイバーセキュリティ」はそうです。
他方で、講談社学術文庫ちくま学芸文庫は、専門的な本、古典や古典になるであろう本を手軽に読むことができて、ありがたいです。専門家は、原著に当たるのでしょうか、素人が入門するには、そして知的好奇心を満たすには、文庫本は重宝します。

2月4日の日経新聞夕刊が「1冊から注文OK PODで絶版学術書も手軽に再刊」を伝えていました。講談社学術文庫のオンデマンド出版が紹介されています。これは、ありがたいですね。