被災地企業と大手企業支援とをつなぐお見合いの場「結の場」

1月11日の読売新聞「大震災 再生の歩み」は、「結の場」(ゆいのば)でした。
・・・東日本大震災の被災地の企業と、首都圏などの大手企業が手を組み、新たなビジネスが生まれている。出会いのきっかけを作ったのは、復興庁主催の相談会「結の場」。経営課題を抱える被災地企業と、課題解決のノウハウを持つ大手をつなぐ、いわば”お見合い”の場だ・・・
という書き出しで、岩手県大船渡市の木工品・職員製造会社「バンザイ・ファクトリー」が富士通の助言で作った「香るiPhonケース」などの実例が紹介されています。

結の場については、復興庁ホームページ「結の場」をご覧ください。仕組みとともに、これまでの実績も載っています。

科学、市場経済、民主主義

ヨーロッパ統合、成功の次に来た危機」の続きです。
近代西欧文明は、自然と社会を人間が制御できると考え、実際にそれを進化させてきました。これは、佐藤俊樹先生の『社会は情報化の夢を見る―“新世紀版”ノイマンの夢・近代の欲望』(2010年、河出文庫)で教わったことです。

近代産業社会は、人間が科学技術の力を借りて、自然を支配できると考えるようになりました(科学革命、自然の論理的認識)。あわせて、社会技術によって社会を制御できると、信じました。そして社会制御に関して、2つの大きな制度を持ちました。産業資本主義という経済制度と、民主主義という政治制度です(p205)。それぞれ、神の思し召しではなく、人間が経済を発展させ、人間が政治を操ります。「人間は、自然と社会を理解でき、制御できる」「人間は、自然と社会を理解でき、制御できる。2

長年、人類にとって大きな敵は、戦争、病気、貧困でした。20世紀後半に、先進諸国では、国際的には平和、国内では治安を達成しました。多くの伝染病にも打ち勝ちました。豊かさを手に入れ、飢餓と貧困からも脱却しました。3つの敵に打ち勝ったのです。これらは、科学技術、自由主義市場経済、民主主義によって、もたらされたものです。

科学技術、自由主義市場経済、民主主義。これら3つの考えの基にあるのは、神様や偶然が自然と社会を支配するのではなく、人間が自然と社会を理解でき、制御できるという思想です。人間主義(ヒューマニズム)が基礎にあります。もう一つ、個人がそれぞれ自由に考え行動してよいという自由主義が基礎にあります。

そして、この3つはものの見方であるとともに、自動的に発展を続ける仕組みを内在しています。参加者の行動が、それらの発展をもたらす仕組みになっているのです。
科学者は、自然のあらゆる現象を説明しようと、研究と重ねます。市場経済は、個人がより豊かになろうと、新たな富を生みだします。民主主義は、政治家と有権者が社会をよくしよう、特に自由と平等を達成しようと、法律や予算をつくります。
それぞれ、個人が努力することが、社会全体の発展につながります。個人を駆り立てるのは、名誉、金銭や権力への欲求です。
これまでは、この仕組みがうまく働き、豊かで、安心で、自由平等の社会を作り上げました。ところが、ここに来て、この仕組みの問題点が明らかになってきました。
この項続く

外国人の受け入れ、地域での共生

1月7日の毎日新聞1面トップは「外国籍の子 修学不明1.6万人」でした。

・・・日本に住民登録し、小中学校の就学年齢にある外国籍の子どもの少なくとも約2割にあたる約1万6000人が、学校に通っているか確認できない「就学不明」になっていることが、全国100自治体を対象にした毎日新聞のアンケート調査で明らかになった。既に帰国している事例もあるとみられるが、外国籍の子は義務教育の対象外とされているため就学状況を確認していない自治体も多く、教育を受けられていない子どもが多数いる可能性がある・・・

入国管理法が改正され、外国人労働者受け入れを拡大することになりました。それ以前に、既に大勢の外国人が、日本で暮らしています。
その人たちを、日本社会にどのように受け入れるか。共生の仕組みが問われています。既に、1980年代に日系ブラジル人を受け入れて、課題はわかっています。
言葉の問題、生活習慣の問題、ゴミ捨てルールから始まって、教育、病気、事故・・・孤立させてはなりません。特に子供がかわいそうです。
地域社会と自治体が、その前線になります。それを、国としてどのように支えるのか、これが課題です。
参考「天皇陛下、お誕生日記者会見

中国改革開放の40年、異質論

中国改革開放の40年」の続きです。同じく12月13日の日経新聞経済教室、梶谷懐・神戸大学教授の「異質論超え独自性議論を」から。
・・・中国国内で改革開放40周年のお祝いムードが広がる中、米中間の対立が単なる貿易戦争を超えて、より深刻化、長期化するのではないかという悲観的な見方が広がっている。その根拠となっているのが、米国のペンス副大統領が10月4日、保守系シンクタンクで行った演説だ。
演説が衝撃をもって受け止められたのは、貿易問題のほか、政治、軍事、人権問題まで、トランプ政権の中国への厳しい見方が包括的に含まれていたからだけではない。それらの指摘がいわゆる「中国異質論」のトーン一色に染められていたからである。
中国の改革開放政策が始まってから、米国の歴代政権は、中国の経済発展がいずれ中間層を育て、法の支配の確立や民主化につながると考え、「関与(エンゲージメント)政策」を推進してきた。しかし民主党オバマ政権の後半のころから、中国の政治経済体制の変革に関する悲観的な見方が広がってきていた。
そして2018年3月の全国人民代表大会(全人代)で習近平氏が国家主席の任期を撤廃し、政権の長期化が明らかになったことが、米国の対中政策が「抑止」に転換する上で決定的な役割を果たしたようだ。その対中政策の変化の根幹にあるのが、中国異質論の台頭であるのは間違いない。

関与から抑止へと百八十度の転換を遂げたかにみえる米国の対中政策だが、実はこの2つの立場は、ある認識においては奇妙な一致を見せている。すなわち、現在欧米に存在する政治経済体制が唯一の普遍的なあり方であり、それ以外の体制はそこに向かって「収れん」している限りは存在が認められるが、そうではない「異質な体制」は存在してはならない、という二項対立的な認識である・・・

・・・もう一つの資本主義経済の特徴として忘れてはならないのが、権威主義的な政治体制と極めて相性がよい点にある。その理由の一つは、端的にいえば、短期的かつ不安定な取引関係をベースにした経済活動が、政治権力から独立した労働組合や業界団体などの中間団体の形成を妨げていることである。このような団体の不在は、市場経済への零細業者の旺盛な参入などある種の「自由さ」をもたらすと同時に、市場への政治介入を跳ね返すだけの「自治」の弱さと裏返しになっている。

短期的な取引について回る「囚人のジレンマ」的な相互不信の状況を、法と裁判制度で規制するのではなく、有力な仲介業者が間に入ることで解消するという中国の伝統的な商慣習も、権威主義体制との相性の良さをもたらす理由の一つである。伝統的な中国社会では、高い信頼性と独自の情報ネットワークを持つ有力な「仲介者」が、公権力との間に常に深い関係を維持し、経済秩序を支えていた。
有力な仲介者が零細な取引を仲介して束ねることで、公権力の側からの効率的な管理が可能になるという構図は、アリババ集団や騰訊控股(テンセント)など、現代中国のインターネットを通じた「仲介」のシステムにも受け継がれている。しかし、法制度に頼らなくても、仲介によって取引に伴うトラブルが回避される手法が高度に発達したことは、逆に社会における法制度への信頼度が低いままとどまり、「法の支配」がなかなか確立されないことと表裏一体であると考えられる。

総じて言えば権力が定めたルールの「裏をかく」ようにして生じてきた、極めて分散的かつ自由闊達な民間経済の活動と、法の支配が及ばない権威主義的な政治体制が微妙なバランスの上に共存しているのが現在の中国の政治経済体制の最大の特徴であり、この両者の組み合わせは今後も簡単には揺らがないだろう・・・

内包と外延、ものの分析、2

内包と外延、ものの分析」の続きです。肝冷斎が、内包を研究することと外延を研究することの違いを、「深掘り」と「周囲確認」の違いとして絵に描いてくれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

平原にある砦のようです、モグラ君は、敷地の中を深く掘り下げています。ニワトリ君は、物見櫓から周囲を見渡しています。どうやら、ライオンが岩陰から狙っているようです。内包と外延の違いが、よくわかります。ありがとうございます。