1月19日の朝日新聞オピニオン欄「安心できる老後って?」、四方理人・関西学院大准教授の発言から。
・・・国民年金ができた1961年と現在では、人口構造が異なります。現在の年金は、現役世代が働いて支払った保険料を、そのまま高齢者の年金に回す「世代と世代の助け合い」です。支える側が減れば、保険料を上げるか、給付を下げるしかありません。
もう一つ、大きな構造変化は、家族です。当時はまだ、3世代同居が基本で、家族に養われることが高齢者の主な生計維持のあり方でした。それを前提として制度を考えたのだと思います。年金の水準も低いものでした・・・
・・・制度が前提としていた家族のあり方は、大きく変わりました。年金があるために高齢者だけでも暮らせるようになった面もあると思いますが、いまは3世代同居は少数派で、1割にすぎません。
高齢者の貧困はすでに深刻です。大きな要因は単身高齢者の増加です。1人分の基礎年金額が、生活保護制度で「最低生活費」と定められた金額を下回っており、生活保護に流入する高齢者が増え続けています。夫婦世帯を想定し、「2人分の年金でみれば、基礎的な消費支出を上回る」と説明してきた政府にとって、現在の状況は想定外だったでしょう。
より深刻なのは、「団塊ジュニア」と呼ばれる世代です。少子化対策が遅れ、下の世代に同じ規模の人口を残せませんでした。労働環境も変わり、非正規雇用が増えたため、厚生年金にも十分に加入できず、国民年金保険料の未納も多いです。団塊の世代に比べて団塊ジュニアは、低年金になる可能性が高いのです。
今のところ団塊ジュニア世代の経済状態は、極端に悲惨にはみえていません。安定した収入と持ち家を有する親と同居できているためです。親が仕事を引退しても親の年金をあてにできます。しかし、親が亡くなれば、自由に使えるお金は一気に減り貧困に陥る人がでてきます。配偶者や子どもを持たない経済的に困窮する高齢者が増えることは、社会全体にとってのリスクだと思います・・・